40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

指導教官とのミーティング、もうすぐ夏休み

月曜日に指導教官とのミーティング。副指導教官は子供矯正歯科の予約が入っているらしく、欠席だった。いつも通りZoomで接続。前回、指導教官が長期休暇から戻ってきて、色々と抜本的な指導を受けたことは記事にした。

 

fourty.hatenablog.com

 

その後、リサーチデザインを書き直して提出し、オーストラリアの学会のPhDワークショップでもらったアドバイスも含めながらTheoretical frameworkの案を作った。指導教官にそれをぶつけてみて、反応を見るというのが今回のミーティングの目的。結果、合格点をもらえた。やっぱり研究分野がある程度近い人じゃないと指導は難しいのかな。正指導教官が戻ってきてから2週間で、自分がしていることが正しい方向にあるような安心感が持てている。

 

今回のミーティングでのポイントをいくつか記録しておく。

①Data selection process(旧Stage1)へのコメント

指導教官不在の時にStage1の研究として着手していた500社の開示情報の収集と分析について、前回のミーティングで「これは研究ではなく単にData selection processだね」と言われた。とはいえ、Dataをselectするプロセス自体に確立された手法がないのが現状。考えうるアプローチ2つを提示。一つ目は開示情報についてのテキスト分析~分類して層別というボトムアップ帰納的な方法。もう一つはすでに存在する別の認証や法律の枠組みを当てはめて分類するという演繹的な方法。

前者についてはソフトウェアにデータを入れたら簡単に分析してくれる(本当に使うときはもっと慎重にしないといけないけど)。とりあえずデータを可視化すること自体は簡単なので、それを見せてみた。指導教官の反応は最初いまいち。「なぜこの分析をしたのか?」と聞いてくる。まず何がどうなっているかを可視化して、そこから不要なデータを除くための分析、と回答。ふーん、という感じ。

もう一つの演繹的な方法については良い反応。「これは良いアプローチだね。でもこの既存の枠組みを使うには、かなり慎重なJustificationが必要になる」ということを言われた。結局のところ、当初良い反応が得られた演繹的な方法ではなく、1つ目の帰納的な方法の方が(現時点では)適切ということに。その上で、こういう情報は見たことがないから、ジャーナルに投稿しても良いかもしれない、とも。ん?これはData selection processじゃなかったのかい?と思ったけど、まあいいや。まずは方向性が一つ決まったので良かった。

  

②Theoretical frameworkに採用した学者のこと

色々と論文を漁った中で、これが良いかな、と思うフレームワークを紹介してみた。その論文は2月か3月頃に読んで「良い論文だなあ」と心に残っていたが、Literature reviewでは出番がなかった。今回改めて読みこのフレームワークを自分の研究の分析の枠組みに使ってみたいな、と思った。20年前の論文なので、内容は少し古いけど、アプローチは使える。調べてみると、著者はカナダの大学の先生で、その人がオックスフォードで博士課程をとった時の研究がベースになっているようだ(イギリスと日本のことを書いている)。その論文のフレームワークについて、指導教官に説明しようとしたら、「この論文は私もよく知っているので説明はいらない。実際、彼女は私の博士論文の審査をしてくれたしね」とのこと。つながってるなあ。研究の世界って広いようでやっぱり狭い?とりあえず、このフレームを参考に組み立ててみることで合意できた。

 

③1年目のMilestoneに向けて

 私が所属する大学の社会学部は、博士課程1年目(Confirmation)、2年目(Mid‐Candidature Review)、3年目(Final Review)という3つの関門を経て、博士論文を提出することになっている。このMilestoneではそれぞれ必要な要件が決められており、例えば1年目のConfirmationでは、6-8,000 wordsのレポートと20分間のプレゼンテーションがあり、2名の審査員パネルが進捗を評価する(審査員は指導教官ではなく全くの第三者で学内の場合も学外の場合もある)。要件を満たしていないと出直しの判断が下される。結構厳しいようで、出直しの判断を受ける人も少なくない(その場合、後日再提出をして要件を満たせば退学になったりすることはない)。博論提出するときになって全然だめだ、とならないように、1年ごとに客観的にレベルを見るという制度。

私は今年の2月に始めたので、本当なら1月か2月にConfirmationをするのだけど、1月はConfirmationパネルが開催されない(夏休みの人が多いので)。2月に予約したいので、学部の事務の人を散々せっついて、予約スケジュールが解禁された連絡を受けてすぐにWebsiteを開いてみたのに、2月の枠は全て埋まっていた。これは中で情報を早くもらっていた人が束でいるね…どの世界にもある話だが。人文地理学科は弱小なので仕方がない。予約できる一番早い3月の日に設定。

これから2か月半、Confirmationを無事に終えられるように準備をしていくが、その話になった時に、「(先週のPhDワークショップでメンターをしてくれた)M先生をパネルに呼ぼうか」と言われた。思わず「え!」と反応したら「彼女は超多忙なので予定を聞いてみないと分からないけど、呼びたいなら声かけてみるよ」とのこと。大御所だし怖い人だけど、全然この内容を知らない人よりは少しでも知っている人にパネルに来てもらった方が、適切なアドバイスがもらえるかもしれない、と思った。実際、先日の40分のセッションで得るものは大きかったわけだし。これも何かの縁かもしれない。

 

充実したミーティングになって良かった。最後に次のミーティングの設定の話ついでに年末年始の過ごし方に話が流れた。「どこか旅行にいくの?」と聞かれたので自分の予定を答えた後、先生にもどこかに行く予定があるのかを聞いてみたらびっくり。「実は私は今シドニーにいて、父の家で仕事をしている」とのこと。当たり前だけどZoomだとどこにいるのか全然わからない。お父さんは今年90歳になったけど、ロックダウンで州をまたげず、誕生日のお祝いができなかったから、クリスマスは絶対に一緒に過ごしたい、ということで、州境が開いているうちにシドニーまで行ったらしい。2週間以上早く行くなんて大げさな…とその時は思った。

 

しかし実はそうでもないことがわかる。月曜日のミーティングが終わって2日後の一昨日、シドニーで2週間ぶりに市中感染が発覚し、すでに10人以上の新規感染者が出ている(日本と比べたら可愛すぎる数字だけど、封じ込め作戦をしているオーストラリアでは大きなニュースになっている)。そのニュースを受けて、西オーストラリア州タスマニアシドニーがあるNSW州からの入州を規制するなどの措置を取り始めた。Victoria州だってNSW州と同じく海外からの帰国者を毎日受け入れているので、いつそのようなことが起こるかわからない。だからリスクヘッジとしては正しい行動だと思った。さすが。

 

そしてクリスマスから正月の間は、NSW州のSouth coastに住んでいる姉妹の家で過ごすらしい。その後に「Then, I will drive home on the 2nd of January」とさらっというので、Drive?となった。思わず「シドニーまで運転したんですか?」と聞いたら、「Yeah, it is about ten hours. Small drive.」恐るべしオーストラリア人。10時間のドライブはSmall driveらしい。毎年そうしてるって。途中で泊まらないんですか?と聞いてみたら、キャンベラの近くに泊まることもあるけど、大抵1日で行くらしい。2人以上いて交代で運転するならまだしも、1人きりで10時間も運転するのか。すごいな。

 

オーストラリアの地図で見ると、シドニーメルボルンって結構近いように見えるけど、全然そんなことない。そういえば、以前私がアデレードの大学で修士を出た後に日本に帰国して、卒業式のために再度オーストラリアに行くという際、アデレード行きの飛行機が予約で埋まっていた。仕方なくメルボルン行きの航空券を購入し、メルボルンからアデレードは国内線で移動しようとしたら、友達が「アデレードからメルボルンまで車で迎えに行くよ」と言って本当にメルボルンまで車で来てピックアップしてくれた*1。12時間かけて…。普通12時間もかかるところに迎えに行くという感覚があるかな。その時もすごいと思ったけど、それを思い出した。ただ国土が広いというだけでなく、時間の使い方に余裕が感じられる。

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知ってはいたけど改めてオーストラリアは広い。https://tabiken.com/au/convenient/population/



 

 

 

*1:日本で例えるなら、関西に住んでいる人が成田空港まで車で迎えに行くような距離だと思う。