40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

20年ぶりのバイト

先月、20年ぶりにバイトをした。そして今月も不定期にシフトが入っている。オーストラリアで初めて給与が発生する仕事でもあった。昨年、ボランティアとしてオーストラリアの団体から業務を請け負ったことはあったが、今回はちゃんとお金をもらう仕事。と言っても所詮学生のバイトだが。現在所属している大学で、立て続けに2つのバイトを行った(うち一つは継続中)。

 

一つ目は、Note-takingの仕事。大学の障害サポートセンターからの派遣で、障がいを持つ大学生のために、彼らがとっている講義に同席して文字通りノートを取る。この仕事を知ったのは偶然、同じPhD部屋にいるドイツからのPhD仲間と雑談がきっかけ。いつも金曜日はWFH(ワークフロムホーム)の彼女がある日金曜日にオフィスに来ていたので、「今日、WFHじゃないんだね~」と言ったら、「Note-takingの仕事始めたから」という。何それ?と聞いてみた。次の週には彼女が障害サポートセンターに私を紹介してくれてすぐに契約。翌週には仕事をしていた。なぜこの仕事に飛びついたのかというと、日本語のクラスを取っている学生のNote-takerがずっと見つからなくて困っていることを知ったから。

 

日本語なら私に任せて!と張り切って請け負った。大きな大学だけあって、数千名の学生が障害サポートセンターに登録している。最初、視聴覚障害の学生向けのサービスだと思っていたがそうでもないようだ。私の場合もドイツ人PhD仲間の場合もサポートしている学生は視聴覚障害ではない。Note-takingする前に一度学生と顔を合わせたのでわかる。詳しい障害の情報は知る由もないが、おそらく広く定義すると学習障害に分類されるのだろうと思う(障害サポートセンターの資料にも登録している学生の多くが学習障害だと書かれていた)。

 

肝心の日本語の授業は中級レベルだったので、日本人の先生が日本語で授業する。私にはありがたいスタイル。ノートもすべて日本語でとる。ちょっと難しいなと思ったのは、その学生がどのくらい漢字を理解しているかが不明な事。最初は丁寧に、普通に我々が使う漢字を使ってノートをとりつつ、難しいかなと思う漢字(小学3年生レベル以上くらいかな)には全てかっこ書きでひらがなを追加していた。例えば、先輩(せんぱい)には丁寧(ていねい)な言葉を使う。と言った感じで。残念ながら、私がNote-takingし始めたのは上期の最後の2週だけだったので、この仕事はもう終わってしまった。その学生が下期も日本語の授業を取れば、ぜひこの仕事は継続したいと思う。

 

ちなみにこの仕事の時給は$37.73。大学の給与レベルでは下の方でHEW3のカジュアル。週に3時間の仕事だった。ちなみに毎週障害サポートセンターのコーディネーターから、必要なNote-takingの授業のリストが送られてくるが、とてもじゃないけど英語の授業でNote-takingするのは無理だと感じた。母国語の日本語でも結構大変なので。

https://www.monash.edu/enterprise-agreements/staff-salary-rates/casual-professional

 

二つ目のバイトは、学部生とコースワーク大学院生の試験監督。大量のPhD学生が雇われている。先週から3週間、大学はExam週間になる。2年ぶりに学生がキャンパスに戻って試験を受けるという大きなイベント。研修に出てびっくりしたが、3週間で8万席の試験が行われる。一人当たりいくつ試験を受けるんだろう?3つか4つくらい?でもArts系だとエッセイが主なので、試験を全員受けるわけではないし。とにかくすごい規模。試験が始まる2週間前から設営が始まっていた。

学生が迷わないようにキャンパスには道案内まで登場

コロナの前は競馬場を貸し切ってそこが試験会場になっていたらしいが、今回は広大なキャンパスの大きなビル3つが試験会場となる。自宅から受けたい人や海外にいる人はもちろんリモートで受けられる。すべての学生が同じプラットフォームで受けるので、大学に来ても学生は一人ひとりラップトップからシステムにアクセスして試験を受ける。試験監督はオンライン監督と現場監督の2種類。私はITに苦手意識があるので、現場監督だけを請け負うことにした。

 

学内にいくつかあるチェックインポイントで学生はIDを提示して、フェスでもらうようなリストバンドを手に付けて試験を受ける

何かのカンファレンス来たのかな?と思うくらい、設営も本格的

覚えることが結構たくさんあって、研修は全部で6時間。研修の分も時給つくのでありがたい。先週火曜日、初めて出勤した。私は40名程度の学生を監督する役割。大きなトラブルなく終わったが、他の場所ではITトラブルが続出していたらしくて大変そうだった。現場監督として聞かれたのは試験会場の場所(巨大かつモダンすぎて構造が複雑なビルなので迷子になる学生多数)、トイレに行って良いか、部屋が暑い/寒いなど。ITトラブルが起きるとSlackを通じてIT担当に情報を上げることになっている。同じ時間に同じビルにいる試験監督全員(20~30人くらい)がSlackでつながっているが、次々に色々なトラブルが挙げられているのを見て、何もない私はラッキーだったと思った。

 

この日のシフトは4時間弱。ほぼ立ち仕事だったので、40代の体にはちょいときつかったが、労働したような気がしてすがすがしい気分でもあった。たまに違うことやってみるのも良い。先週、もう一つシフトが入っていたが、咳が出ていたのでキャンセル。今週は2日シフトが入っている。バイトちょっと楽しい。臨時収入もらえるし。

 

この仕事の時給は$43.38。Note-takingの仕事よりレベルが一つ上。正直Note-takingの方が価値が高い気がするが?どのようにしてレベルが決まっているのかは謎。試験監督は半日働くだけで1万5千円くらいもらえる。物価が高いといわれるオーストラリアだが、ちゃんとバイトの給料も高い。

 

やっぱり働くっていいなあ。研究も面白いけど仕事したい気がしてきた。でもオーストラリアで私ができる仕事は限られる。日本で日本語ネイティブレベル+英語が中級レベル、かつ専門分野の知識と経験があれば仕事を選べる立場。逆にオーストラリアでは、自分の強みである専門分野が英語の不完全さにより発揮できない。私の仕事は特に言葉を扱う仕事(広報に近い)なので、単にネイティブレベルで言語を操れるだけでは足りない。ネイティブの中でも特に言葉を使うことが得意じゃないとできない仕事。とてもじゃないけど私の英語が、普通のネイティブを通り越してそのレベルに達するとは思えない。

 

面白いのは、日本にいるときは英語ができる人として扱われるが、逆にオーストラリアにいると日本語ができる人として扱われる。そんなことから、もしポストが空いていれば下期に大学で日本語クラスのチューターをやってみても良いかな、と思い立った。実は「プロフェッショナルな現場で使われる日本語」という、超高度な日本語のユニット(ビジネス日本語)に興味を持った。例えば「今日」じゃなくて「本日」と言う、など、日本人でも社会人1年生で教えてもらいたいレベルの日本語。そのユニットを提供している先生にメールを送って聞いてみたら、残念ながら下期は開講されないとのこと(上級レベルの学生が少ないらしい)。でも他の日本語クラスのチューターに興味があればEoI出してみてくださいと言ってもらえた。フルタイムで会社員していた時はそんな寄り道もできなかったけど、これも学生ならではの経験かな、と。

 

本来なら自分の専門分野のクラスのチューターができたらよいのだけど、カタコト英語だと学生に迷惑をかけてしまうことになるので遠慮した。オーストラリアではアクセントは全然あっても良いのだけど、私の英語はまだまだ文法のミスが多いし、単語のバリエーションも乏しすぎる。ということで、肉体労働(試験監督)と日本語を使ったバイトをする今日この頃。