40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

インタビュー2社目、登校許可証の発行

一昨日の金曜日は、オーストラリア企業2社目のインタビューだった。この企業が私の研究に参加してくれることになった経緯は、LinkedInで「社名、分野名」を検索して出てきた人に直接メッセージを送り、その返信のやり取りから受けてもらえることになったというもの。おまけに、彼女は自分の上司も誘ってくれて、1対2のインタビューとなった。

 

今回、インタビューを行うにあたって、大学に登校許可証の発行を申請し、無事受理されたので、大学の図書館で行った(もちろんZoomで)。ロックダウン中のメルボルンでは、大学生や大学院生、大学の教職員も基本的にキャンパスへの登校は禁止されている。例外として医薬看護系等の一部の学部のさらに一部の人たちが登校を認められているだけ。ただし大学の図書館は自宅で勉強や研究ができない学生のために時間短縮して平日のみ開館している。自分の研究にとって、オンラインインタビューでのデータ収集をこの時期に行うことが計画通りに博士課程を進めるために必要な事なので、大学の事務局に登校許可の申請を行った。

 

登校が必要な理由として、①オンラインインタビューのために安定したインターネット接続が必要なこと(家のインターネットは不安定)②小学生の息子2人がホームラーニング中なので、インタビューを邪魔する可能性があること、の2つを挙げた上、自宅からキャンパスまでは5km以内であることとインタビューがない日は基本的に自宅作業をする予定であることを書き添えたら、すぐに許可が下りた(ただし、オーストラリアあるあるの事務手続きミスがあり、肝心の許可証自体の発行は10日間程度ストップしていた)。

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Victoria州の許可証フォーマット
https://www.coronavirus.vic.gov.au/authorised-provider-and-authorised-worker-permit

 

キャンパスに登校するときには常にこの許可証と学生証を携帯することが求められている。金曜日の朝、図書館に行ったら、入口にいたセキュリティガードにじっくりと中身を確認された。許可証は2枚つづりで2枚目に許可された曜日や時間の記載があるが、その内容までちゃんと確認していた(ちょっと感心)。学生証と許可証に加えて、スマホQRコードを読み取り(Vic州共通)図書館への入館登録を済ませる。単に大学の図書館に入りたいだけなのに、学生証、許可証、スマホの3点セットが必須となってしまった。

 

許可を受けた学生しか図書館に入れないため、案の定、図書館は空いていた。とはいえ、全然人がいないというわけでもなく、一定数の学生が許可を受けていることが見受けられた。みんなどんな理由で申請したのだろう?シェアハウスで自室がないとか、インターネットがないとかだろうか?

 

予約していた個室に入って準備。今回は相手が2人なので少し気が楽だ。1対1よりも自分が話す割合が少なくて済むはず。前回のインタビューの教訓から、会話が途切れたり、上手く聞き取れなかったときに備えて、企業の開示情報を細かく読み込み、ピンポイントで聞きたいことをいくつかリストアップしておいた。今回の企業はメルボルンに本社があり、当然2人とも自宅の部屋から参加してくれている風だった。しかも偶然2人とも私が今所属している大学の卒業生だった。

 

今回のインタビューの自己採点は80点くらい。相手が2人いたことで、聞きたい内容をかなり幅広く、また深くカバーできたので良かった。問題は、相手が英語を話すスピードが早すぎて、私の理解が追いつかなかったこと。ネイティブが2人いると、おそらく普段の自分たちの会話のスピードになるので、ノンネイティブの自分にはついていくのに苦労する。前回の1対1のインタビューでは9割以上相手の言っていることが理解できたが、今回は正直7割くらいしかわからなかった。とはいえ、インタビューは録音しているので、研究上は全く問題ない。

 

驚いたのは、もともとLinkedInを通じてOKの返事をくれた方の人がすごく協力的で、なんとインタビューの終盤、こういうテーマを聞きたいのなら、ここをチェックしてみたら、と特定の団体名を教えてくれた。「そうしてみます」と答えて、家に帰った後にメールを見たら、その人が自分がおすすめした組織の担当者にメールをしてくれていて(私はCc)、「今日、●●(私の名前)というPhD学生のインタビューに参加したけど、彼女はあなたの話にも興味があると思うので、良ければインタビューを受けてみて。」と紹介してくれていたこと。これにはびっくり。

 

その返信として、相手から「研究の詳細を送ってくれれば検討しますよ」との返事あり。急いで、説明資料等一式を送ったらあっさりOKになって、来週インタビューをすることになった。実はその組織はオーストラリアで誰もが知っているが、企業ではないため(上場していないため)、研究の対象に入れていなかった。実際、論文の中でどのように取り扱うのかは指導教官に相談してみるが、せっかく紹介してくれたので話を聞いてみたいと思う。これでオーストラリア企業は9社が確約、プラス2社がペンディングで、日本企業よりもN数が多くなった。

 

もう一つ驚いたことがある。昨日、さっそくインタビューの内容の文字起こしを始めたとき、自分が聞き取れていなかった会話の中に面白い内容が入っていた。インタビューの最中、2人が笑っているときがあって、正直自分はその会話が聞き取れずに流していたが、録音を聞き直してみると「You can come and work with XX(インタビュー企業名)after this conversation! 給料はこの人(上司)が払うから!」と言っている。そして2人でワッハッハと笑っていた。もし聞き取れていたとしても、こういうジョークに対してどうやって返答するのが良いのか分からないので、結局流していたように思う。ジョークだと分かっているが、そう言ってもらえたことが素直に嬉しかった。

 

その後、インタビュー先を紹介してくれたり、参考になりそうな情報源をメールで送ってくれたり、なぜかすごく協力的な人で本当にありがたかった。ロックダウンが終わって、いつか実際に会ってお礼が言えたらいいな。こんな人もいるんだ、と嬉しい驚きだった。インタビューの最後に「あなたのレポートを読んでみたい。いつ頃できそうなの?」と聞かれたので、ドキッとした。研究としてまとめるだけではなく、協力者にちゃんとフィードバックしないと、と改めて身が引き締まった。それを聞いて、日本企業向けのフィードバック資料を早速来週から作ろうと思った(日本企業はほぼインタビューが終了しているため)。

 

ただ、英語のインタビューを文字起こしするのは本当に時間がかかり、頭がすごく疲れる。正直、10分から15分くらいしか集中力が持たない。今回の2人の英語は早口であること、言葉をつなげて話す癖があるので、何度聞き直してもよくわからない部分もあり、前回の人よりも時間がかかっている。だんだん慣れてくるのかもしれないが、進みがとても遅い。日本語のインタビューの場合、1時間のインタビューを文字起こしするのに3時間程度で済むが、英語だと倍の時間がかかる。つまり、10分間の会話を文字に起こすのに1時間かかるという…。ちなみにワード数としては、10分間で1,000~1,500 wordsくらい。1時間弱のインタビューで、7,000~8,000 wordsになりそう。

 

しかしこの作業は、発言者の内容を正しく理解するという研究にとって必要なプロセスであるだけでなく、自分にとって最高の英語学習の教材にもなるので、時間はかかるが外注しなくて良かったと思っている。文字起こしをしていて改めて思うが、自分が知らない単語は聞き取れないということ。いくつか新しく学んだ単語や表現があるので、今度記事にしてみようかなと思っている。