40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

日本の学会に入会、小さな世界

コロナの影響で各種イベントがオンライン化する中で、多くの学会もオンライン化されている。ふと、今の状況なら日本の学会に参加できるのでは、と思いついた。アカデミアのネットワークがない自分は、自分の研究分野でどんな学会があるのかも知らない。ネットで検索して、いくつか関連がありそうな学会を見つけた。ホームページを見て、活発に活動していそうな学会1つに申し込んでみた。

 

学会入会の手続きとして、簡単な入会申込書の他、会員からの推薦が前提となっている。知り合いが会員にいない場合は、学会の理事と面接が必要とのことだった。会員なんて一人も知らないので、総務担当の方の紹介で理事の方と面接することに。ただ、海外にいるということで、メールベースでのインタビュー(Q&Aに回答する)になった。理事の先生がとても良い人で安心。そして、先週開催された理事会の審査で無事入会が許可された、との連絡を受けたのが今週火曜日。その連絡と前後して、研究部会の代表を務める先生から、9月度の部会の開催案内が届いた(学会の下に複数の研究部会が設置されている)。今週の木曜日の夜に開催されるとのことで、さっそく参加してみた。

 

学会自体は会員が500名くらいいるみたいだけど、今回参加した研究部会は数十人で構成されていて、さらにオンラインで参加した人は20名程度だった。冒頭、部会長の先生から、今日は新規の方が3名おられます、と紹介を受けた。そこでZoom画面に映し出されている人の顔をみたら、知っている人がいた!その人は私が2社目に勤めた環境関連のベンチャー企業(10年以上前の話)で、私の指導役だった先輩。今は年賀状のやり取りがメインで、最後に会ったのは4年前くらい。その先輩も私と同じ時期にそのベンチャー企業を退職し、その後2回転職して、今は別の企業に勤めている。まさか知っている人がいるとは思わなかったので驚いてしまった。しかもその先輩も誰からの紹介もなく、ホームページを見て入会申請し、先週の理事会で承認を受けて、今回初めて部会に参加するという、私と全く同じ経緯。部会長の先生から、「お二人は同じ時期に同じ会社にお勤めされていたようですが、今回二人で相談して入会を決められたのですか?」と聞かれてしまった。普通そう思うわね。

 

これがビックサプライズ。サプライズはまだある。3名の新規入会者の残り1人は、私が修士を出て最初に勤めた企業の人だった。ただし、その人は私が辞めた後に入社したので面識はない。それでも「え!?」っと思った。何しろ従業員数十名の小さな会社なので。そして、自己紹介の際に、現在休職中の会社(3社目)の名前を告げたところ、部会長の先生から、その会社の人も学会にいますよ、とのこと。私が所属していた部署で以前部長を務めていた人。お互い知っている。3社目は単体だけでも1万人以上従業員がいる大きな会社なので、同じ会社でも知らない人が多いが、その中でも知っている人が学会に入っていたことに驚いた。そんなこんなで、私のキャリアヒストリー、1社目、2社目、3社目とすべての企業の人が、この学会にいることを知った。学会って大学の先生たちが集まって、小難しい話をしている会だと思って緊張していたら、実務の人たちも普通にいるんだ、と拍子抜け。こんなんなら、東京で働いていた時から入っておけばよかった、と思った。

 

今回の研究部会では、修士の学生(社会人学生)1名が自分の研究テーマについて発表し、それに対して参加者から質問や意見を受けるという形だった。私としては、同じ分野の学生がどんなテーマをどんなアプローチで研究しているのかを知ることができた点も興味深かったが、それ以上に質疑の時の大学の先生たちの鋭い意見や幅広い視点が本当に勉強になった。私自身も発表を聞いていて色々とコメントや質問したいことがあったけど、初回なので若干遠慮気味にしていたら、どんどんいろんな先生が発言するので時間切れになってしまった。いつもなら発言したいのにできない場合はストレスになるのに、今回は良かったと思った。なぜなら、先生たちの意見や質問を聞くのがとても勉強になったから。やっぱりプロはすごい!と素直に感動した。本を何冊も書いているような大御所の先生の視点の広さや深さにも感動したけど、自分と同じ世代の准教授たちの切れ味の良さにも感心した。やっぱり研究者はすごいな、と。

 

自分の研究テーマにプロの研究者たちからこんなにもいろいろな示唆をもらえるのであれば、私も自分の研究の形が見えてきたら、ぜひ発表してみたいと思った。年会費たったの3,000円(学生料金)で、自分の研究に対して複数のプロからアドバイスもらえるなんて、学会はお得すぎる。自分は博士課程1年目で、学会に貢献できることはあまりなさそうだけど、留学が終わった後も末永く関わっていきたいなと思った。

 

今回はコロナによるオンライン化の良い面を享受した。研究部会は毎月開催されているが、通常は平日の夜に東京都心で開催されているので、関東エリアの大学の人たちがメインの参加者のようだ。Zoomで開催されることになって、全国の大学の先生たちが参加できるようになったのは良いことだし、それだけでなく私みたいに海外にいる人も参加できる。これがFace to faceに戻ったら、私は参加できなくなる。もちろんコロナは早く収束してほしいし、自由に人と会えるようになったら、本来やろうと思っていた大学内、メルボルンやオーストラリア内でのリアルなネットワークを作るつもり。でも、それまではこうやってオンラインだからこそできることをしていこうと思った。アメリカでも面白そうなカンファレンスやセミナーが多数オンラインで開催されているけど、問題は時差…夜中の2時とか絶対無理だし、朝4時というのも起きられそうで起きられない。オンラインイベントの天敵は時差だと確信。こればかりは超えられない。