家族以外の人との接触が極端に減っているせいか、ちょっとした近所の人たちとの関わりに「じーん」とくるときが増えている。メルボルンに来てもうすぐ3か月、この家に引っ越してきて2か月経つけど、この2~3か月は変化の連続だった。やっと海外での新しい生活に慣れてきそうなところでコロナ騒動。でも物は考えようで、少しタイミングが遅れていたら渡航できていなかったし、渡航してすぐにコロナ騒動があったらそれはそれで大変だったと思う。住むところが見つかり、新しい生活が落ち着いて、近所の人たちとの関わりが少しずつできた状態でこのコロナ騒動に突入。その中で、いくつか近所の人とのやり取りに「じーん」としたことがあった。
①大家さんのおばあちゃんが手作りケーキをくれた
先週日曜日、当然のごとく出かけられないので家族で家にこもって暇をつぶしていたら、家のドアをノックする音。出てみると、玄関先にアルミホイルに包まれた皿が置いてあった。少し離れたところに大家さんのギリシャ人のおばあちゃんがいた。差し入れをくれたんだ、と分かった。使い捨てのプラスチックの皿の上にたくさんのキャロットケーキ。まだ温かかった。家で焼いてすぐに持ってきてくれたみたい。せっかくなので温かいうちに家族みんなでいただいた。甘すぎず、素朴な味でおいしかった。人情を感じた。おばあちゃんは70代後半。このままコロナにかからずに元気に過ごしてほしい。
②酒屋さんのおじさんが息子に飴をくれた
私の住んでいる家から最寄りの駅まで徒歩5分くらいだけど、駅前にインドストリートがある。店が10軒程度並んでいるが、インド、インド、台湾、インド、インド、香港、インド、インド、インドみたいな感じ。インド系のお店はレストランが4軒、他スーパー、コンビニ、酒屋がある。家から一番近い店なので、私はお酒をそのインドのお店で買っている。ちなみにスーパーはほぼインド食材店だが(ものすごい種類のスパイス類を始め見たことがないものがほとんど)、コンビニと酒屋は経営がインド人というだけで品ぞろえはオーストラリアの標準的な内容。先週木曜日の夕方、長男と散歩に出かけた帰り道にビールとワインを買うために酒屋に立ち寄ったところ、酒屋のおじさんが、会計のときにカウンターにある売り物の飴を一つとって、にっこり笑いながら長男にくれた。「売り物なのに良いの?!」と思ったけど、いつもその人がカウンターにいるのできっと経営者なんだろう。長男はラッキー。「Thank you!」と言って、ありがたくいただく。
③韓国料理屋のおばさんと会話した
インドストリートから道を渡ったところに、韓国料理屋がある。私は韓国料理が大好きで、2月には3週連続そのお店で食事をした。最初に入店した時に、いかにもそのお店を取り仕切っている感じの韓国人のおばさん(60代くらい)に韓国語で話しかけられたので、「私は日本人ですが、韓国料理は大好きです」と言ったら、かなり韓国語訛りの英語で「Korean food is very healthy!」と返された。家族で行ったのに私だけビールを注文したら(夫は下戸)、「あなたがビールを飲むの!うーん!」みたいに返されたり、「チャプチェを先に食べなさい!これは温かいうちに食べないとダメ」と注意されたり、なんか最初からやたらと距離が近い。2回目からはなぜか入店時に「Long time no see.」と言われる(ジョークなのかどうかは不明)。お客さんは半分くらいが韓国人の常連、残り半分がそれ以外(アジア人が多い)。
3月23日にすべてのレストラン、カフェ、パブなどの営業が禁止(厳密には店内飲食が禁止)されてから、どうしているのか気になっていたが、金曜日にサイクリングに行った帰りに店に電気がついているのに気が付いたので、立ち寄ってみた。店の前に「Take away only 電話番号」という紙が貼ってあったので、持ち帰りはやっているんだ、ということで、中に入ってみたら、おばさんがいた。椅子はすべて机の上にあげられていて、お客さんは一人もおらず、少し寂しそうだった。私の顔をみて「How are you doing?」と聞かれた(今こそLong time no see.を使うときなんじゃないの、と心の中でツッコミ)。単なる挨拶、というよりも「このコロナ騒動の中で、元気にしていたの?」と言われたような感じ。私が自転車のヘルメットを手に持っていたのを見て、「あなたは自転車乗るのね。良いわね。私は自転車乗れない」と。海鮮チヂミ、チャプチェ、プルコギを注文。キッチンに確認して、15分でできるということなので、店の中で待たせてもらった。店を出るとき「カムサハムニダ」と言ったら、何か韓国語で返されて「?」の顔をしていたら、「Please come tomorrow.」と英語で言われた(これもジョークなのかどうか不明)。「明日は無理だけど、また来週来ます」と答えて店を後に。ホカホカの状態で家に持ち帰って、炊いていたご飯と一緒にいただいた。久しぶりのプロの料理はおいしかった。また持ち帰りしよう。
他にも近所の道を歩いていて、たまたま家から出てきた人に挨拶されたり、サイクリング中にニコッと笑いかけられたり、ということがあった。こういうのはオーストラリアの日常なので、いつもなら何も思わないようなことなのに、人と接することが極端に減っているせいなのか、リアルな人とのコミュニケーションの一つ一つにいちいち「じーん」と来てしまう自分がいる。ちょっとセンチメンタルになっているようだ。