私の博士課程の研究テーマはざっくりというと、企業と社会との関係についてだが、このコロナウィルス危機の最中、多くのニュース情報を得る中で、最近、異業種の企業が新たにマスクを作り始めたニュースがいくつか出ていることが気になっている。記録のためにも記事にしてみる。
シャープ
これは何週間か前に日本のニュースになっていて、多くの反響があった。家電メーカーであるシャープがマスクを作るの?という意外性が人々の関心を呼ぶのだと思う。マスク製造を行うシャープの三重工場は、もともと液晶パネルを作っている工場とのこと。パネル製造用にクリーンルームを持っていたため、一部ラインを転用してマスクの生産をするということのようだ。記事によると2月28日に政府から要請があり、それを受けて1か月程度で生産までこぎつけた、というもの。政府からの要請を受けての生産なので、まずは政府への納入、その後、一般にはWebサイト上で販売するとのこと。生産能力は日産50万枚目標。
https://corporate.jp.sharp/news/200324-a.html
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/07451/
※経産省が補助金を組んで公募を行っていたよう。7社がこの事業に参加している。
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2020/s200313001.html
家電メーカーの次は、私も愛用している靴メーカー。Made shoes yesterday. Making masks today. というキャッチコピーまでつくってある。写真の撮り方も洗練されている。この辺のPRのうまさはシャープと比較すると、日本企業とアメリカ企業の違いがみられて興味深い。ニューバランスはアメリカ国内にある5工場のうち2工場で医療用のマスクを作る。昨今、アパレルや靴メーカーは生産をすべて下請工場に外注しているケースが多い中、ニューバランスが自社工場を持っているとは知らなかった。地元の医療機関や研究開発機関、行政と協議したとのこと。週産10万枚目標(シャープと比べるとかなり少ない)。3Dプリントに関する言及があるので、ニューバランスも既存の技術をもとに(むしろ今後の発展性を見据えて)マスク製造に取り掛かるようだ。流通はアメリカ国内のみの予定。
北米トヨタ
日本を代表する企業、トヨタの北米事業(Toyota Motor North America) もマスクを含む医療用品の製造を発表。まずは北米のいくつかの工場で3Dプリンタを使ったフェイスシールドの製造から開始。すでに米国内のいくつかの病院への納品が決まっている。マスクについてはフィルターを製造するパートナーを探している模様(2020年3月27日時点)。
https://pressroom.toyota.com/toyota-we-are-here-for-you-toyotas-response-to-the-covid-19-crisis/
他、ニュース検索で多くの企業の取り組みが確認できる。以下は一例。
GAP(アメリカ):製造ラインの一部を流用して製造、カリフォルニア州の病院と協力
https://nypost.com/2020/03/25/gap-canada-goose-make-masks-and-scrubs-for-those-fighting-coronavirus/
Eddie Bauer(アメリカ):20,000枚のマスク(うち5,000枚はN95)を生産委託工場で製造し、ワシントン州政府経由で州内各病院に寄付
Dior(フランス):フランス国内のBaby diorのアトリエでマスクの製造を開始
ランボルギーニ(イタリア):室内装飾部門が外科用マスクを製造、ボローニャ大学と協働、日産1,000枚、ボローニャ州の病院に寄付
https://response.jp/article/2020/04/02/333241.html
GM(アメリカ):社内でチームを立ち上げてマスクの製造に着手、日産5万枚(最大)を予定
https://response.jp/article/2020/04/02/333241.html
スズキ(インド):インド政府の要請を受け、インドの現地メーカーと組み人工呼吸器の生産に着手。3層構造マスクも生産して、インド政府や自治体に供給
https://jp.reuters.com/article/suzuki-india-idJPKBN21J59Q
海外の有名どころだけでなく、日本の中小企業も頑張っている。
また、アルコール製造メーカーがハンドサニタイザーの生産をするなど、コロナウィルスに関していろいろな企業が自分たちができることは何かを考えて動き出していることは心強い。もちろん、製薬会社や医療機器メーカーなどは本業そのもので貢献すべく必死に頑張っているだろうが、普段まったく違うことをしている企業が、有事に何とか社会に貢献できることはないか、と動いている点は興味深い。自分の研究を進めなくてはいけないが、この件もしばらくニュースを追っていきたいと思う。