リサーチ課程の大学院やMBAへの留学時に必要となる「推薦状」。英語ではReferenceやReferee reportといわれるもの。今回調べた大学のコースすべてで、申請にあたり推薦状(2通という場合が多い)が申請の要件として入っていた。ちなみに、Coursework mastersの場合は不要のケースが多いようで、私が実際に2003年に留学した際も申請書類としては求められなかった。
日本もしくは海外の大学(学士)、大学院(修士)から直接リサーチ課程(MphilやPhD)に申請する人は、普通に自分の指導教官や所属する大学の先生にお願いすれば何の問題もないが、私の場合は最後に大学を出てから15年経っているので、誰に推薦状をお願いするのが良いのか、かなり悩んだ。しかも1通ではなく2通必要。気が遠くなり、推薦状をお願いしたくないために、コースワークにしようかと一時は考えた。
また、MBAならば自分が勤めている会社の上司や元上司などにそれぞれ2人分、3人分お願いしてもおかしくないと思うが、私の場合はMBAではなく普通に研究課程なので、実務の能力ではなくAcademicの能力を証明してくれる人を推薦者とするのが理想的。ただ、直近15年間は社会人として働き、Academiaから離れているため、2名の推薦者のうち1名は実務者(会社の人)でも良いと考えた。つまり、1名は大学関係者、1名は会社関係者、という形が自分にとって最適という結論になった。(大学がどう思うかは不明)
まず大学関係者の選択肢を洗い出した。
①学部時代の指導教官(日本)
大学3年の後期から4年の1年半をかけて卒論を指導してもらった教授。卒業直後に学会に連れてってもらって卒論のエッセンスを発表する機会をもらえた(その時のことは今でも良く覚えている)。ただ、学部を卒業したのは17年前で先生とは年賀状のやり取りはあるが、すでに退官されている。大学院で学びたい専門分野とも異なる。
②大学院時代の指導教官(オーストラリア)
コースワーク修士の最後の半年でリサーチプロジェクトに携わり、修士論文を書いた。修士論文のテーマはこの先生にアドバイスを受けてかなり変えた。修論の評価はHigh Distinctionという非常に高いものをいただけた。その時の教官はまだオーストラリアの大学に在籍している。ただ、15年前に半年面倒を見たコースワーク修士の私を覚えているか怪しい。
③現在付き合いのある大学の先生(日本)
有志が集まって議論する研究会に2年前からプライベートで参加しており、その研究会は大学の先生が開催している。博士課程の研究テーマと一番近いが、個人的に指導を受けたわけではないので、私の人となりやスキルを証明するほどの情報は持っていない。
色々と考えた末、まずは②にアプローチすることにした。修士を出た大学のHPから先生のメールアドレスを確かめ、メール文章をきちんと考えてから送付。私は誰か、というところから始まり、推薦状をお願いしたいこと、なぜあなたにお願いしたいか、今の自分の状況となぜ再び大学院に行こうとしているのか、といった点を長くなりすぎず、ただし丁寧に説明する必要がある。E-mailだけのコミュニケーションは非常にこのあたりが難しい。誰かの参考になるかもしれないと思い、実際に送ったメールと近い文案を記載する。
Dear Professor T,
My name is A. I was a postgraduate student from Japan and earned a Master of ** from the University of B with your supervision for my dissertation in 2004. The title of my dissertation is “CDE”. You may not remember me but thanks to your supervision, I could receive HD for my dissertation.
Today, I am writing to ask if you would be willing to write a referee report for my research degree application. Now I plan to apply to three universities in Australia. The application deadlines vary depending on universities. If you can accept my request, I will send you details later.
The reason why I would like to ask you to write a reference is that even though it was fifteen years ago, my latest academic achievement realised with your support as a supervisor and you are the most appropriate person who can reference my academic competence. To apply for the universities, I need two referee reports, and the other one will be provided by a senior management of the company I am working for.
After my graduation, I returned to Japan and have been working as a professional in the field of FGH and IJK for more than ten years. Working on day to day business in the field, I am getting interested in researching this area more deeply in an academic institution, to find most effective way for LMN.
Thank you for considering my request for referee report. I attach my CV, transcript and abstract of my dissertation on this email. If you would like further information, please feel free to contact me.
Sincerely,
送ってから3日後に返事が来た。返事の内容は、「あなたのことはよく覚えています。どんな内容で推薦状を書いてほしいかを連絡してくれれば、その内容を見ながら書くことはできます。ただいくつかの個別の大学に出す時間はありません。」というもの。
100点満点の答えではないが、ダメではなかったので一安心。早速お礼の返信をした。どんな内容で推薦状を書いてほしいかを連絡せよ、というのは、正直私のことを全く覚えていないからではないかと思った。でもOKしてくれたので、このまま突き進む。
推薦状以外のことに時間を使っていたため(当時IELTSが大詰め)、先生からリクエストされた推薦状の内容をドラフトできたのは2か月ほど後。ドラフトには、自分の良いところ、アピールできる強みをシャープ記載するとともに、先生の記憶を呼び覚ますよう、修士論文のテーマを選んだ際のエピソードや研究時の私の姿勢ややり取りをいくつか盛り込んでみた。そして以下メール送信。複数大学への対応はしたくないという前回の返信を受け、譲歩策として、申請を1つの大学に絞ったので、その大学から直接送られてくるであろう連絡に対応してほしいことは明確に記載した。(これなら断れないだろうという目論見で…)
Dear T,
I hope you are doing well.
I have drafted a referee report as attached. Could you kindly review and edit it?
So far, I received supervising offer from an associate professor in B, and decided to submit the application to the university. Based on the university rule, I need to provide referee’s name, title and email address and it seems that they will contact to you directly. Also, there would be some check boxes in B referee report format, but still they will request you to give details of my academic experiences.
I decided to apply for B university only, so you don’t need to submit your referee report to several universities. I plan to submit details of referees next week and then the university will contact to you later. Thank you very much for taking your time for me.
Please let me know if you have any questions.
そしたら早速先生からOKとの返信あり安堵。攻めの姿勢で挑んでよかった。協力してもらえてありがたい。先生には大学から直接連絡が行くので、私が送ったドラフトも参考にしながら対応してほしいことを再度伝えて、このコミュニケーションはクローズ。
次に会社。どのタイミングで上司に伝えるか、少し気を使った。また現在の直接の上司は上司になってから数か月しかたっておらず、私のことをよく知らない。関係が浅い直属の上司にお願いしたほうが良いのか、これまで一緒に様々なプロジェクトをやってきた元上司にお願いしたほうが良いのか、立場は部長でよいのか、もっと上の方の人がよいのか、など一通り考えを巡らせた。結論として、現在の上司をすっ飛ばしたコミュニケーションをすることに良い点はないと考えて、まずは上司に海外の大学院に留学したいと考えていること、その際に大学から推薦状が求められたら協力してもらえるか、直接聞いてみた。留学については最初驚いていたようだが、理由を説明したら納得してもらえたようで、協力する、と言ってもらえた。こちらもありがたい。日頃のコミュニケーションを通じて信頼関係を築いておくことが非常に重要だと再認識した。
会社に伝えたタイミングは今年の年初くらい。まだ留学の可能性も分からない中で会社に伝えるのは躊躇したが、結果的にこのような早いタイミングで伝えておいたことは良かった。
このようにして、無事2名の推薦者を確保することができた。大学院申請の準備の中で、研究計画書やIELTSは自分が努力すれば何とかなるが、推薦状は他人を巻き込むことになるため、非常に気を使ったし、何がベストかをいろいろな視点で考えた。