昨日も大学に登校した。また初めましてのPhD学生に会った。スーパーポジティブなサウジアラビア人男性。同じ部屋は人文学系の学生が詰め込まれているので、学部は様々だが、その人はメディア・フィルム関連の学部で、ドキュメンタリーの倫理について研究しているらしい。面白そうなテーマ。
英語がとても流暢だけど、少しだけアクセントがあるので「もともとオーストラリア出身ですか?」と聞いてみたら、「サウジアラビアだよ。知ってる?」と言う返事。もちろん知っている。でも前回のスロベニアでの失敗(スロバキアと誤解)したことが頭をよぎり、念のため「アラビア半島にある大きな国ですよね?」と聞いてみたら、合っていたのでホッとした。彼曰く「よくサウジアラビアってどこ?と聞かれるんだよね。みんなドバイのことだと思っているみたい」とのことだった。
そして私に対しては「中国人?」と。まあ、こちらで出会う東アジア系の人の8割以上は中国人であるような気がするので、そう聞かれるのは慣れている。何なら、街を歩いていて、当たり前のように中国語で話しかけられることもあるし、接客の場面で「Do you speak Chinese?」と聞かれたりすることもあるくらいだから。「日本人です」と言ったら、「Oh、僕はついに日本人に会えた!ずっと日本人に会いたいと思っていた!」と妙に明るい。10年前にカナダに語学留学していた時に、クラスメートに日本人の男の人がいて、その人がとてもまじめで几帳面で良い人だったらしく、日本人に良いイメージを持っているとのこと。「君は僕が人生の中で出会った2番目の日本人!10年ぶりだ!」と言われた。
とにかく、今年に入っていろいろなバックグラウンドを持つPhD学生と出会い始めることができたのは嬉しい。当初は、学部がバラバラの学生を同じ部屋に詰め込んで嫌だな、と思っていたけど、今では全然違う分野の人と話す機会ができて、自分の視野が広がると思えば、これはこれで良いことのような気もしている。また出身国も様々で、今のところ同じ部屋にデスクがあるPhD学生の出身国は、日本(私)、中国、インドネシア、バングラデシュ、イラン、サウジアラビア、スロベニア、アメリカ、オーストラリア(複数)。
昼には散歩がてら、キャンパスの中でまだ行ったことがないカフェに行くことにした。学部が夏休み期間中のためか、多くの建物で大掛かりな工事をしていた。色々なところが通行止めで、迷子になりそうだったけど、目的地であるカフェに無事行くことができた。そのカフェは、今まで踏み入れたことがないサイエンス系の学部が集まるエリアにあった。工事のせいで正面から入ることができず、裏口から建物に入って、複数の実験室の横を通った。どうやらBiomedicalの建物だったようで、実験室には企業との共同研究なのか、誰もが知っている大手製薬会社の名前が記されている部屋もあった。
実験器具を間近に見て、なんだか懐かしくなった。もう20年も前になるが、私は学部生の時は農学部で、3年~4年の時には研究室に所属して実験をする日々を過ごしていた。クリーンルーム、マイクロピペット、シリンダー等々を間近に見て、その頃のことを一気に思い出した。あとはキムワイプの箱があれば完ぺきだったが、あれは日本のものだからこちらでは別のメーカーのものを使っているのだろう。実験器具を洗った後に毎回蒸留水をかけるのが面倒だったな、測定器具の関係で一人で部屋にこもって眠いのに徹夜でデータ採集したな、とか、暑い中、毎朝作物に水やりに行ったな、とか、当時は嫌だったけど、今となっては懐かしい思い出。
社会学系に目覚めたのは、卒論を書いているときだった。実験は嫌いだったけど、卒論を書くのは楽しくて、特にイントロダクションを書くのが一番楽しかった。その時に、私は自分が卒論のテーマにしている問題を解決するための手段を理系的に探すことよりも、そもそもなぜその問題が起こっているのか、という社会の背景の方に興味があるということに自分で気が付いた。今思うとそのことに気が付けたのが、卒業研究の最大の収穫だったのかもしれない(あと自分が実験を含む理系の分野全般が苦手だと確信したことも)。
家から出てキャンパスを歩くだけでこんなに刺激がもらえるのか、と嬉しくなった。昨年はこの先の何年か分、まとめて家に閉じこもったと思うので、今年は意識的に外に出ていきたい(もちろんコロナの状況に応じて)。ということで、昨夜勢いで全豪オープンのチケットを買ってみた。コロナで海外から観客が来られないし、州外の人もあまり来ないので、席を間引きしていてもチケットは全体的に余っているみたい。今日の午後、大坂なおみ選手の3回戦を観戦しにいく。