40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、11月に博士号取得。現在は東京にある外資系企業で勤務。

博士課程3年目の始まり

私は2020年2月1日に博士課程を開始したので、今日からちょうど3年目になる。私が所属する大学の社会学部は365日いつでも好きな時に博士課程が始められるので、学校が準備する区切りがなく、自分で1年目、2年目とカウントすることになる。

 

初年度と2年目の開始の時の記事を自分で読み返しながら、節目に振り返りをしておきたい。

 

fourty.hatenablog.com

 

fourty.hatenablog.com

 

今ちょうど、3月初に控える2年目の審査の準備をしている。25,000 words程度のレポートのドラフトを提出。その中には博士論文の2つのチャプターのドラフト(約23,000 words)が含まれている。ちなみに博士論文は80,000 words弱になるので、ざっくり3割強。粗々のドラフトとしては40,000 wordsくらい(4章分)書けているが、今回はそのうちResearch designの章と、Findingsの章のうちの一つを提出した。Research designの章は1年以上前にドラフトが完成していたので、それを現実に合わせてアップデートする形。Findingsの章も半年前に一度ドラフトを作成して指導教官からフィードバックをもらっていたが、こちらは大幅に書き直した。数日前に指導教官に提出して、今はフィードバック待ち。

 

ドラフトが手離れしている間にプレゼン資料を作っている。審査会には約20分間のプレゼンテーションが含まれる。提出したレポートとプレゼン(QA含む)から、学部がアサインした審査員(大抵社会学部に在籍している自分とは専門が異なる先生になる)、指導教官がアサインした審査員(自分の研究に近い分野の人。私の場合はイギリスの大学の先生)、学部のチェアの先生の3人から評価を受ける。当たり前かもしれないが、評価するのは自分の指導教官ではない。どちらかというと、指導教官も評価される側の人間。

 

2年目の審査について、同じ部屋にいるPhDの先輩(年下)に聞いたところ、2年目の審査が一番楽とのこと。落ちる人はほとんどいない。研究が進捗していて、ちゃんと終わる見込みを示せれば、少しくらい遅れていたり、突っ込みどころがまだまだ多くてもOKらしい。とはいえ、私としては今できるベストのもので臨みたいところ。

 

プレゼン資料の最後の方に2年目の成果の振り返りをする。そこに書いたこと。

Progress during the second year

  • Completed data collection and interview transcription (may conduct additional interviews if needed)
  • Conducted initial analysis of Japanese companies
  • Research findings report prepared and sent to six Japanese companies
  • Presented research findings to the external audiences (A University and B 学会)
  • Submitted a research paper to one conference (C Conference 2022)

 

自分としては、2年目も1年目に引き続きロックダウンによって、子供のホームラーニングのサポートに時間を取られ、子供がうろちょろする中で数か月を費やしたことを考慮すれば、最低ラインはクリアできたと認めたい。ロックダウンさえなければ、オーストラリア企業の分析とレポートの作成(フィードバック)、投稿論文をもう1本書くことくらいは想定していた。コロナに足を引っ張られながらもなんとか2年目を渡り終えたという感覚を持っている。とにかく、絶対に必要なデータ収集が何とか終えられたのは良かった。当初想定したベストな形ではないし、まだ正当化しないといけないロジックも残っているが、おそらく大丈夫だろう。

 

また博士課程とは別に、書籍の章の執筆(ケーススタディ)が大きな活動となった。これはいよいよ出版社への提出原稿や権利関係の書類(各種承諾書など)を整えるという最終段階に来ている。今年のどこかで出版されるようだ。取りまとめの先生から、私の章を他の人のモデルケースにしたい、この先に発行する書籍にも原稿を作ってくれないか、と依頼された。これは素直に嬉しかった。おそらく規定にきちんと沿ってコンテンツを作成したこと、納期をきちんと守ることなどが良かったのだと思う。私は研究よりケーススタディみたいな文章を書く方が合っているのかもしれない。もっと貢献したいが、ネタ探しからしないといけないから難しい。

 

その他、プライベートも含めて博士課程留学2年目にやったのは、スポットコンサル(個人コンサル)10件、翻訳ボランティア2件、子供関係のボランティア1件。どれも会社員としてバリバリ働いていた時にはできなかったことなので、貴重な経験になった。

 

そして迎えた3年目。提出するレポートには、博士課程修了までの細かいスケジュールも掲載する。章ごとにいつ書き終えるかも書く。もう終わりが見えてきたのは寂しいし、この先1年間の予定を書くと、あっという間に終わってしまう気がする。予定では今年の12月に提出前に審査(3年目審査)を終えて、今からちょうど1年後である2023年1月か2月に博論を提出したい。3年間で博士課程を終える予定(あくまで希望)。ちなみに3年間は私の所属する大学の社会学部で最短で博士課程を終えられる期間。標準は3年3か月であり、それをさらに6か月間延ばすことができる(奨学金などの権利含め)。奨学金(PhD学生の生活費)は博論を提出した時点で打ち切りらしいので、急いで提出するメリットはなく、なるべく書き直しがない状態、十分なクオリティまでもっていってから出す人が多いとのこと。

 

そんな中、つい先日まで悩んでいたのは、TeachingやTutoringをするかどうか。指導教官の先生からふわっと勧められたが(私だけではなく他の学生も)、悩んだ末に申し込みしないことにした。理由は複数あるが、一番は時間的な優先順位。1年目、2年目と散々コロナによるロックダウンで研究時間が削られてきた中、3年目の今年だってどうなるのか分からない。2年も痛めつけられて、もう楽観視はしていない。もしロックダウンのように、自分の研究時間を奪うような出来事が起きた際、責任が重たいTeachingやTutoringの仕事を研究よりも優先させてしまう可能性がある。そうすると、予定通り博士課程を終えることができない。途中で放り投げることができない仕事を追加でやるのはやめておいた方が良いという判断を下した。

 

もし博士課程を始めて2年間、コロナが無い状態で、研究がもう少し前に進んでいたら、私にとって英語面での課題は大きいが、TeachingやTutoringにもチャレンジしてみたかったと思う。私は日本の大学の学部卒業と同時に高校の教員免許(理科と農業)を取得したが(今は失効している?)、教育実習に参加した時に先生というのも面白い職業だな、と思っていて、その記憶は今もある。また、社会人になって何度か大学に赴いて学生に対してプレゼンテーションしたり、インターンシップの受け入れをする中で、若い人と一緒に課題を考えたりするプロセスは楽しいと感じた。TeachingやTutoringをすれば、また多くの学びと経験を得られることは分かっているので、チャレンジしてみたい気持ちもあった。

 

一方、私は博士課程が終わった後、今のところ会社員に戻るはずなので、キャリア上、大学におけるTeachingの経験は必須ではない。そういう意味でも優先度は必ずしも高くない。もちろん、大学院生の中にはお金を稼ぐことを目的にTeachingスタッフをするケースもある。時給はチューターでざっくり1万円程度。

https://www.monash.edu/current-enterprise-agreements/academic-professional-2019#92

 

高いようで、英語にハンデがある私がやるとなると準備の時間が人よりかかるし、決して割りが良い仕事ではなくなる。ちなみにスポットコンサルの時給は2万円~3万円なので、お金だけみれば、日本語でできるコンサルの方が効率的。でも、私はお金稼ぎのためにオーストラリアに来ているわけではなく、帰国したらまた嫌というほど仕事をすることになる(はず)。仕事をしなくても良いサバティカル的な3年間を別の仕事で埋めるよりは、研究以外の時間はボランティア活動や論文、書籍等の執筆、オーストラリア生活を楽しむ経験に費やしたいと思った。

 

TeachingやTutoringについて声をかけてもらったことで、自分の中での優先順位を考えるきっかけとなったことは良かった。少しだけ後ろ髪を引かれる思いもあるが、どうしてもやりたいと思えば、残りのセメスター2で申請することもできる。それよりも何よりも研究の分析、論文執筆、学会発表など、博士課程の学生としての本分をしっかりとやらなくては。3年目は欲張りしないで、確実に研究を進めていくとともに、家族でのオーストラリア生活最終年を十分に楽しみたいと考えている。

 

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夏休みの家族旅行、フィリップ島(2回目)の景色。子供たちも2年で大きくなった