無事、世界最大の経営学会であるAoMに参加し、発表を終えることができた。シカゴへの一人旅について、色々と書きたいネタはあるけど、まずは学会のこと。国際学会に参加して得られたものをリストしてみたい。

1.名前だけ知っていた一流研究者と会って話ができた
博論のフレームワークに使ったアメリカ人の教授、この領域で飛ぶ鳥を落とす勢いのアメリカ人若手研究者、似た研究をしているスペインの研究者などなど。いままで論文を通じて名前だけは知っていた研究者たちに直接会うことができたのは面白い経験だった。
大御所の研究者や有名な研究者はもちろん私のことは知らない。でも彼らのセッションが始まる少し前に部屋に行き、暇そうにしているときに自己紹介して話しかけたり、セッションで挙手して質問することで、実際に会話をすることができた。これからは彼らの名前を見るたびに、人となりを想像することができる。対面の学会ならではだと思った。
2.自分の研究を引用している研究者と会えた
正直、1よりもこちらの方が数倍嬉しかった。1人目はドイツの大学にいるPhD学生。Best student paper awardにノミネートされるような優秀な人。研究テーマが似ているので、現地についてから彼女の学会ペーパーを読んでみたら、私の研究が要所要所に引用されているのを発見!これは話しかけなければ、とBest student paper awardのセッションの後に声をかけた。
1で書いたことの逆のバージョン。彼女は私と会えてとても喜んでくれた。5分程度の立ち話では足りなかったみたいで、その後にメールが来て、もっと話したいから時間を作ってもらえませんか?と聞かれた。一緒に参加していた別のセッションが早く終わったので、30分ほど会場のロビーで話し込んだ。彼女は来年PhDを終える予定で、アカデミアでの就職を狙っている。私はどうしたいのか、考えるきっかけをくれた。
1で書いていたスペイン人の研究者チームは、私と同じセッションで発表することになっており、また彼らの最新の論文では私の2023年の論文を引用してくれていることも分かった。お互い引用し合う関係で、セッションも同じ。研究手法は異なるが、テーマが近い。このテーマで実証研究を発表しているのは、現状、世界を見渡しても(英語で発表されている論文に限れば)、私とそのスペインの研究チームとあと1組しかいない。ちょっとしたコミュニティ感があった。
もう1件、会場であり宿泊していたホテルの交流スペースで一人で朝ご飯を食べていたら、日本人の研究者から話しかけられた。AoMではほとんど日本人を見かけないので、嬉しかった。東京の私大に所属されている方で、研究テーマはドンピシャで一緒ではないが、私の日本語で書いた論文を読んでくれて、私のことを認識してくれていた。その方が受け持つ大学院の講義で、ゲスト講師ができるかどうかを聞いてくれた。アメリカで日本人研究者とつながれるのも面白いと思った。
3.ジャーナルのエディターに挨拶できた
前々回の記事に書いた投稿論文のリジェクト。最後に返事をくれたエディターが非常に丁寧で、リジェクト自体はショックだったけど、丁寧なメールには感謝していた。そのエディターがパネルを務めるセッションに参加。直接話す姿を見て、考え方が自分に近しい感じがした。この人はオランダの大学の教授。
そのセッションが終わったら話しかけようと思っていたけど、パネルだったのでたくさんの人に囲まれていた。私は次のセッションに参加するためにその会場を出た。翌日、もう一度チャンスが巡ってきた。別のセッションでその教授が聴講者として参加しているのを発見。セッションが終わった後、ホールで話しかけた。私のペーパーに対してthoughtful feedbackをくれてありがとうございます、と直接伝えることができた。
自分がリジェクトしたペーパーの著者と話すのは、少し居心地が悪いのかもしれない。君が期待する結果にならなくてごめんね、と言ってくれた。3名のレビュアーのうち、2人目が相当辛辣なコメント。悩んだ末の結論だったんだろうと思う。メールに書いてくれていた、改善ポイントについて、再度口頭で伝えてもらえた。ということは、私のペーパーのことを記憶しているんだと少しうれしかった。
今回、AoMで自分の研究テーマに関するセッションに5つくらい参加し、その中で交わされている議論や切り口から、書き直すために使う理論をひらめいた。もう書きたい内容は決まっていて、あとは会社員しながらどのようにして時間を捻出するかなんだけど‥‥このジャーナルからは、実は自分がレビューしたペーパーの再レビュー依頼も来ている。自分がリジェクトされたのに、アクセプトされるペーパーの改善に貢献するのは複雑な気持ちだけど、そこはもちろんフェアに行動する。
懇親会の時に私の発表と同じセッションで発表していた北欧の研究チームと雑談していて、同じジャーナルの同じスペシャルイシューに投稿してリジェクトされた、という話を聞いた。私だけではなかった。というか、このテーマ、流行になってきて、おそらくスペシャルイシューへの投稿数がかなり多かったのではないかという気がする。研究者にとって、質の高いジャーナルに投稿チャレンジして、リジェクトされるのは日常茶飯事なんだなあと。同じことを経験している人と話したことで気持ちが軽くなった。
今回、自分が研究者としてAoMに参加し、他の研究者と交流して思ったのは、有名なペーパーを出している(=ジャーナルに採用されやすい)のは、アメリカの研究者が多いが、自分と課題意識やアプローチが似ているのは、ほぼ全員が欧州の研究者だった。経営学の世界では、おそらく社会文化的要素が色濃く反映されるが、日本と欧州は日本とアメリカよりも共通項が多いことを考えれば当たり前のことかもしれない。あと、欧州の研究者の方が日本やアジアに興味を持ってくれている雰囲気も感じた。
長くなったので、AoM参加の研究面での振り返りはこの辺にしておく。次はシカゴ旅行記について書くつもり。

