今日はネガティブ投稿。自分自身の気持ちの浄化と博士課程で起きたことの記録として。お題はレビュー(査読)について。対象は前回の記事に書いたANZ学会のペーパー。
今週月曜日にANZ学会のサイト上からレビューにアクセスできるようになった。レビューの内容を踏まえてペーパーを改訂し、9月中旬に再提出する必要がある。レビューは早速PDF化したが1日寝かせて、フレッシュな気持ちで昨日(火曜日)に対応することにした。レビュー内容への対応は来週の指導教官とのミーティングで話し合うことになっていたが、取り急ぎレビュアーのコメントのみ2人の指導教官に送付。
5分後、いつもは私のメールをほとんどスルーする副指導教官から返信が!彼女から返信があったことにまずびっくり。内容を開いてみると何やらネガティブなにおい。
Thanks (私の名前), one positive one less positive. Do ignore the postscript of the last individual - the provocation paper he refers to has been discussed within the XX(私たちの専門) field and the leading research network decided against releasing a statement of rebuttal against this to not give it the airtime ...
この時点でまだレビューコメントに全部目を通していなかった私。どうやら2つ目のレビューに変なことが書いてあるので無視しろ、ということらしい。ちなみにこの副指導教官の英語、ちょっと難しいと思った。意味としては、2人目のレビュアーが追記(Postscript)に書いてあることは無視しなさい、彼が参照している論文は先生たちの専門分野でも問題になって、でもこの論文が注目されないようにあえて反論は出さないことにした、と読み取った。自分の英語読解力に自信がなかったので、同じ指導教官についているスリランカ人の友達にもメールを見せて私の理解があっているかを確認した。
そこで初めて私は自分のペーパーに対する2人目のレビュアーの追記を確認。確かにひどい。彼/彼女が伝えたいのは、私のペーパーはBullshitだ、というメッセージ。直接Bullshitといえないので、私のペーパーはこの論文に書かれていることを想起させる、と「追記」で伝えてきた。その論文のタイトルは「Bullshit in the XX Literature」というもの。
夕方になって正指導教官から来たメールはこんな感じ。
The second reviewer's comments are a quite rough - and really the comments are somewhat inappropriate for this kind of review. Maybe the reviewer was having a bad day.
とにかく、あまり良いレビューではない。実際、この2人目のレビュアーのレビューは異様に長い。1人目のレビュアーの2倍以上のボリューム(1人目のレビュアーが22行に対して2人目のレビュアーは52行も書いている)。すべてのセクションに対して、至らぬ点を指摘するだけでなく、自分の感想や文句を必ず挟み込んでいる。要は無駄が多い。例えばこんなことが書かれていた。
This is poor in my view. If I were a conference delegate encountering this abstract and using this content as basis on whether to attend the presentation, or download the full paper from the proceedings, I would skip it.
The framing of this paper is off .
To me, this is poor scholarship.
This is the weakest aspect of the paper; it simply does not communicate anything of real value in the context of scientific research.
I didn’t understand what I was reading in the Findings section.
There is no conclusion for the paper really.
What is it that the authors want their audience to take home from this paper?
Postscript: This research reminded me of the sentiment and provocation put forward in the following recently published work: 前述のBullshit論文のタイトルとリンク
最初の印象は「この人、このペーパーがとにかく嫌いなんだな」ということ。レビューに生々しい感情が含まれている。次に思ったのは「この人が私の指導教官でなくて良かった」ということ。でも読み進めるうちに、この人はおそらく教授レベルではなく、PhD学生かポスドク、もしくは非常に不安定な状態にある若いリサーチャーだろう、と思えてきた。自分の研究が認められていない、指導教官からボロカスに言われている、ジャーナルに投稿したペーパーがリジェクトを食らった、などの出来事があって、メンタルの状態が悪く、私のペーパーを必要以上に攻撃することでストレスを発散しているのでは、と想像。レビューから負の感情があふれ出ていて、読んでいるだけでこちらにもその感情が移りそうで嫌になった。
指摘の中には妥当だと思えるものも一応あったし、そもそもレビューを受けた以上、何かしらの対応はしないといけないのだが、変なのにあたってしまったなあ、というのが正直な感想。ちなみに1人目のレビュアーはペーパーの出来を全体的に褒めた上で(I commend the research team for exploring an important topic which has been presented well in the paper. )いくつかのテクニカルな指摘をしてくれていた。レビュアーが2人いる意味ってこういうことか、と改めて納得。
もう一つ、改めて感じたのは、AoM(世界最大の経営学会)のレビューは質が高かったなあ、ということ。AoMの時にレビューも2人だったが、今回のANZ学会と比べるとレビューに深みがあって、グサッとくる厳しいコメントもありつつ、こうしたらもっと良くなるよ、という気持ちが後ろにあることがわかるトーンだった。なんなら、こういうアングルで分析してみたらもっと良くなると思うというアドバイスとともに、読むべき論文をいくつか挙げてくれていた(今回の2人目と対照的)。ANZ学会になるとレビュアーの質も下がるのか。そもそも私にレビューの依頼が来ていたくらいなので、あまり引き受ける人がいないのかもしれない。AoMにはまた挑戦したいが、ANZ学会に出るのはこれが最初で最後だろうな、とも思った。
今回は、ジャーナルへの投稿ではなく、15ページ(約5,000 words)のカンファレンスペーパー。ただ、レビューを踏まえて改訂し、受理されればPublication実績にもなる。したがって、このレビューを無視して、学会にも出ない、という選択肢は私にはなく、次のステップとして、レビュアー2人のコメントを踏まえてペーパーを直さないといけない。このワークをするためには、相手の負の感情に引きずられない強い気持ちが必要になる。
昨日の午前中、半分弱対応が終わった。午後にも続けてやっつけようと思っていたが、昼ご飯を食べたら向き合いたくない気持ちになってしまい、しばし日本語の文献を読んでクールダウン。それでもやりたくないので、ゴールドコーストのホテル探し。今回の学会はグリフィス大学のゴールドコーストキャンパスで開催されるが、調べてみるとサーファーズパラダイスからトラムで行けるらしいので、大学の近くではなく、サーファーズパラダイスに泊まることにした。立地が便利で値段が高くない場所を押さえたが、ちょっとした贅沢で50ドルほど余分に支払い、海が見える部屋に。3泊で400ドルちょっと。ゴールドコーストのホテルは安い。
ホテルの予約が済んで、やっと気分が晴れてきたので、再びレビューに向き合う。人のペーパーをこんなにボロカス言える人って、逆にどんな人なのか興味がある。ずっとアンハッピーな日々を送っているのか、このレビューを書いたときだけBad dayだったのか。後者だといいなと思いつつ。ジャーナルへの投稿と違って、今回は学会のペーパーなので、実際にこのレビュアーも会場にいる可能性が高い。私の発表を見に来るだろうか?
仕事をしていた時にも、やたらと攻撃的なメールを送ってくる人、実際に面と向かってひどいことを言ってくる人にも何度か遭遇した。だからこういう人がそこかしこにいることには驚かない。仕事をしていた時に出会った攻撃的な人は、大抵周りからの評価が低く、自分が認められていないことに不満を持っている人や何かしら大きな不安を抱えている人が多かった。つまり満たされていない人。もちろん、こういう人がすべて攻撃的になるという意味ではない。
この人はどんな人なんだろうと考え始めると、アカデミアの闇に引きずられそうになった。私のペーパーに対して、何時間も(何日も?)かけてレビューを書いてくれたことには感謝するが、どんな状況であっても大人なんだから、もうちょっとProfessionalなコミュニケーション術を身につけてもらいたい。
Bad dayで思い出した曲。レビュアーに教えてあげたい。