40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

オーストラリア企業の分析結果をプレゼン

昨日は私の博士課程の研究プロジェクトに参加してくれたオーストラリア企業へ、フィードバックのプレゼンテーションを行った。研究の事例調査には日本企業6社、オーストラリア企業10社が参加してくれて(いずれも大企業)、それぞれの内容を博論のFindingsのチャプターにまとめた後、そのサマリーをレポートの形で送付していた。

 

日本企業からは大抵丁寧な返信をもらったが、追加で説明してほしいというようなリクエストはなかった。一方、オーストラリア企業はほとんど返信無し(想定内)。でも一部の人は食いついてくれた。そのうちの一人が昨日の相手。実は彼自身、昨年私がインタビューを行ってから、オーストラリアの大手企業から私の研究領域に特化したシンクタンク/コンサル(本社はイギリス)に転職をしている(これもオーストラリアあるある)。今回はその転職先の彼のチームのミーティング内で発表をしてくれないか、というリクエストだった。

 

もちろん快諾。準備のための手間や時間はかかるが、インタビューに協力してくれた人へ私ができるお礼の方法だから断れない。また、素直に自分の研究内容に他者が関心を持ってくれることはうれしい。この件を指導教官に話したところ、月曜日は指導教官の休みの日にも関わらず、同席したいとのこと。私が調査参加者とやり取りする内容については、私から求めない限り特にいつもコメントなしだったので意外。

 

プレゼンの相手は、メルボルンシドニーシンガポールという3拠点にまたがるいわゆるAPAC(アジア大洋州)のチーム。ちなみに日本には拠点がない。なんとなくシンガポールの人たちも参加するというのを聞いて安心した自分。私以外、おそらく全員英語ネイティブ(もしくはほぼネイティブ)ではあるが、アジアの人がいるだけでなんとなくアウェイ感が減るような気がするのが不思議。

 

東京でコロナ罹患中に宿泊療養施設で最後の2日間、資料作成に着手した。でも倦怠感があったので一日あたり1-2時間しかできていなかった。メルボルンに戻ってきてからもなんとなく集中力がなく、資料は先週水曜日に完成、木曜日にあった指導教官とのミーティングでざっとレビューして、金曜日に読み原稿を作成した。今回の資料作成はこのプレゼンのためだけではなく、(もし選ばれたら)12月のANZ学会発表の基にもなるので効率的。このプレゼンのレビューのプロセスを通じて、指導教官とオーストラリア企業の分析内容について議論できたことも良かった。

 

前置きが長くなったが、実際のプレゼンは昨日の12時から。10時~12時で日本語クラスでNote takingのバイトをしていたのでぎりぎりで心配したが、幸い日本語クラスが少し早く終わったので、授業があったビルから走って自分のオフィスに戻り、その横にある会議室でスタンバイ。

 

参加者はオーストラリアから5~6名、シンガポールから4~5名程度だった。30分の枠をもらっていたので、最初の15分をプレゼン、残り時間をディスカッションにした。オーストラリア企業の分析内容を人前で話すのは初めてだったのでちょっと緊張。プレゼンの出来具合も学会の準備と比べたらまだ自分の中では質が高くないという不安もあった。

 

プレゼンは14分程度で終了し、質疑に。10名の参加者から次々と質問を受けて、頭がパンクしそうになった。自分でも何を話したのかほとんど覚えていない。シンガポールの人たちはほとんど質問しないで、ほとんどがオージーからの質問。早口英語を聞き取るのに必死。完璧に理解することはできないので、頭をフル回転させて大体こういうことを質問しているのだろう、と想像し、それに対して瞬時に自分の回答を英語で言わないといけない。

 

1対10の対話なので、私は30分間、一切気を抜くことができなかった。水すら飲む暇がない。博士課程のマイルストンの審査よりも厳しい環境。直前には「引き受けなければよかった…」とナーバスになっていたが、いくつかとても良い質問やコメントをもらえたので、参加して良かったと思っている。ブロークンイングリッシュでも内容は伝わったようだ。活発なディスカッションがあって大変だったけど、「しーん」としてしまうよりも100倍マシ。どんどん投げかけられる質問への対応が大変で、正直最後の方は早く終わってくれ、と思っていたが。

 

最後に、かなり突っ込んだ質問をしてきたボス的なオージーの男性(見た目50代くらいのベテラン)から「君はいつ博士論文を提出するのかね」と聞かれたので「来年の2月か3月です」と答えたら、「今年の12月に予定しているカンファレンスで日本とオーストラリアの比較分析を発表してもらえないか?」と言われてびっくり。聞き間違いかもしれないと思ったので、一応「Sure!」とだけ答えておいた(便利な言葉)。この時点ですでに30分を数分すぎていたので、ミーティングはここで終了。

 

プレゼンの直後、指導教官から「Great presentation」という題名のメールが来ていて、褒めてもらったのがうれしかった。セッションの間に出たいくつかの質問について、博論のディスカッションパートで掘り下げた方がよい、とのアドバイスも。このメールで参加者から何を聞かれていたのか確認することもできて良かった。

 

どっと疲れたので午後はほとんど使い物にならなかった。何も生み出す活動はできないので、AoMのサイトにアクセスして、参加予定だったハイブリッドやバーチャルセッションの録画を見て過ごした。

 

夜になって、もともとの調査参加者の人からお礼のメールをもらうとともに、Ccにそのボス的な人が入っていて、カンファレンスについての相談があるかもしれないと書いてあった。私の聞き間違いではなかったようだ。まだどうなるか分からないが、日本とオーストラリアというAPACに位置する2つの国の比較をしている点に興味を持ってもらえたのだと思う。

 

めちゃくちゃな英語でもなんとか理解してもらえるのが分かったのは良かったが、残念なのは相手が言っていることがまだ100%理解できないこと(人にもよるが初めて話す人の場合は大体7~8割程度)、それに対する自分の答えは言いたいことの半分くらいしか言えないこと。伝えたいことが英語でうまく出てこない。単語のつなぎ合わせみたいな、とぎれとぎれの文章になってしまう。もっと英語ができればなあ、と改めて思った。いつもギリギリの英語で乗り切っていて疲れる。

 

シアトルの学会は、実はオンラインでの参加が多くて、現地はあまり盛り上がらなかったらしいという話も聞いた(私のマイルストンパネルのイギリスの先生から)。コロナのせいでシアトルに行けず、録画ビデオで発表するだけになりガッカリだったが、実は現地に行っていてもそんなに色々なフィードバックはもらえなかったのかもしれない。今回、アカデミックな場ではないが、参加者から多くの示唆をもらえたのは、研究にとって絶対にプラスになる。博士論文を書いている最中に研究内容を他者と共有し(論文投稿も含む)、フィードバックをもらうことは大事だなあと感じた。