40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、11月に博士号取得。現在は東京にある外資系企業で勤務。

オーストラリア企業のリクルーティング

最近の研究の進捗を記録。フルタイムで働けていないので進捗は芳しくないが、この2週間で一番大きな収穫は、研究のデータ収集に必要なオーストラリア企業のリクルーティングが何とかなってきたこと。以前の記事にも書いたが、当初、日本、オーストラリア、イギリスの3か国に本社がある世界の大企業500社のうち、条件を満たした企業をリクルートする予定だった。手始めに日本から初めて7社から協力を取り付けた。

 

ところが、イギリスの企業のリクルーティングが全然うまくいかず、5月頃?に方向転換。世界の大企業500社のリストをベースに対象国を拡げようとEthicsも出し直して承諾されたが、国がバラバラになりすぎると分析が複雑になるという懸念が出てきたため、対象国を日本とオーストラリアの2か国に絞ることに。その場合、オーストラリアの企業の母数が5社と少なすぎるため、スコープをASX100というオーストラリア証券取引所への上場企業のうち時価総額上位100社に拡げて、Ethicsも出し直し、再スクリーニング。結果、調査対象の条件を満たしたのは48社あった。

 

この48社に対して、公開されているメールアドレスや企業ホームページのお問い合わせフォーム、LinkedInを通じて調査依頼を送付。3社が調査への協力をしてくれることになった。これではまだ足りないので、今週の指導教官とのミーティング時に相談したところ、先生が2年前に行ったインタビューの対象者リストをシェアしてくれた。その対象者がまだその企業で働いているかどうかをLinkedInでチェックしたのち、その人達に直接メール送付。結果、追加で3社が承諾してくれた。この他に、以前指導教官経由でコンタクトした2社もインタビューを受けてくれることになっているので、この後断られなければ合計8社を確保したことになる。ただし、うち1社は来年じゃないと難しい、と言われているので外す可能性もある。

 

指導教官の協力もあり、日本企業と同じくらいの母数を集められそうで一安心。各企業に対して複数人のインタビューをする設計なので、まだハードルは残っているが、何とかこのアプローチで進めそうだ。今回、オーストラリア企業のリクルーティング作業をしていて、いくつかの学びがあった。

 

① 英語での(ちゃんとした)ビジネスメールのやり取りの経験が少ないこと

日本で働いていた会社では、私はグローバルプロジェクトの取りまとめをしていたこともあるので、他国の担当者と英語で会議したりメールのやり取りをしたりすることはしょっちゅうあった。しかし、日本に本社があるグローバル企業なので、相手側(海外の子会社)は、日本人の下手くそな英語にかなり慣れている。多少メール文がおかしくても意味が通じれば良いという感じだったので、あまり気にせずにやり取りしていた。

 

一方、今回は私が日本人で英語ネイティブではないことは全く言い訳にならず、自分の研究への協力をオーストラリア企業で働く人たちにお願いする立場。依頼する時点で私の英語がおかしいことが露呈すると、協力してくれる企業がいなくなるのでは、と不安だった。最初のリクルーティングメールは倫理審査委員会に承認されたものなので、それをそのまま使うとして(指導教官チェック済み)、その後のやり取りは1社ずつ異なる。間違った英語を使っていないかどうか、何度もチェックしてからメールを返信していたので、いつも以上に時間がかかった。

 

② オーストラリア企業はビジネスメールもフランクかつ効率的

まずフランクという点について。最初、依頼企業のフォームやコーポレート窓口のメールに送るときは個人名ではなく部署名等を書いて送付するが、返信が必ず、Hi (私の下の名前),と書かれている。いきなりファーストネームで返信が来るし、Hiから始まる。こちらが堅苦しく返信するのもおかしいのでは思い、返信の時、私もHi (相手のファーストネーム), から始める。でもこれで良いのだろうか、と少し不安になる。

 

あとはメールの内容ややり取りに無駄がない。一番効率的な人は、私が出した最初の依頼メールに対する返信で、協力を承諾する旨を伝えるだけでなく、サイン済みの同意書を添付し、インタビュー候補日時を提示してくれる。そうすると、インタビューまでのコミュニケーションが1往復で済んだ。他の人からのメールもほとんどが短く、余分なことが書かれていない。日本企業とのやり取りでは、何度かメールをやり取りして、丁寧な説明をしたり、場合によっては事前のZoom会議をしたりもしたが、オーストラリア企業はとてもあっさり。このスタイルは無駄がなくて良いなと思った(私が返信するメールもあっさりを心掛けているが、無礼な感じにならないように気を使ってもいる)。

 

③ 責任ある立場の人もパートタイムで働いていたりする

これは一番面白い発見。やり取りしている相手は、最低限マネージャークラス以上、肩書としてはHead of XXという人たちもいるが、何人かはパートタイムで働いていた。メールの署名に「私は何曜日と何曜日のみ働いています」ということを書いている人もいれば、返信で自分が働いている曜日を教えてくれる人もいた。私の指導教官も実際今年の7月から、週5日勤務から週3.5日勤務にしている。こういう働き方は本当に羨ましいと思った。

 

日本にいるとき、年収が半分もしくは3割減になっても良いから、仕事する時間も半分もしくは3割減にしたいな、と常々思っていた。日本企業で働いていると、フルタイムで働くだけでなく、残業までしないと責任ある立場、責任ある仕事に就くことが難しいのが現状。週3日や4日働くどころか、週5日で働いていても、時短勤務者が昇進しにくかったり、責任ある仕事を任せてもらいにくいことなど、当たり前にある。

 

私自身、子供が生まれてからもフルタイムで働きながら管理職になったが、ほとんどの管理職が当たり前にしている長時間労働をすることができず、いつも後ろめたく感じていた。一方、自分の部下に総合職で時短勤している人が2人いて、彼女たちにも時間制限がある中でも責任ある仕事を任せながら(そうしないとそもそも仕事が回らないから)、成果をきちんと評価していきたいと思い、人事に何度か相談や質問をしていた。

 

週5日みっちり企業で働くよりも、例えば4日間は企業で働いて、残りの1日は育児に限らず、ボランティアや趣味、勉強、副業などに費やせて、組織に属しながらも柔軟に働く道もあれば良いのにな、と以前から思っていた。今回、オーストラリア企業の人たちとやり取りしていて、それがすでに実現していることが分かり、うらやましく思った。スキルと経験があれば、そういう働き方でもやっていけるんだということがわかる。

 

そういうことが垣間見れたのがすでに自分にとって学びになっている。インタビューは来週2社予定している(先週の記事で今週としていたのは間違い)。今日、2回目のワクチン接種があるので副反応で熱が出て動けなくなることも想定し、今週中に2次情報をもとに企業研究をして、原稿の準備もしておいた。とはいえ、半構造化インタビューなので、インタビュー中に深掘り質問をする点は、ぶっつけ本番になる。うまくいくと良いな…。