昨日と今日、天気も良く気温は20度前後と快適な気候だったので、2日連続で自転車で大学に登校した。そうしたら、昨日は同じ部屋のPhD仲間(中国人)に会い、今日は隣の席に座るPhD仲間(バンクラディシュ人)に会った。2人に会えて言葉を交わしたことが、自分でも驚くほど元気をくれた。考えてみると、彼らと話をしたのは実に10か月ぶりとなる。10か月ぶりと分かったのは、ブログをつけていたから。
中国人のXは私よりも1か月前の2020年1月に、バングラディシュ人のLは私よりも1か月後の2020年3月にPhDを開始しており、また2人とも私と同じく社会学部(School of Social Sciences)でSPS(Social and Political Sciences)というコースに在籍する。気づいてみればとても境遇が近くて、本来ならお互いの進捗を交換したり、悩みを相談したりできる相手。それがコロナのせいで関係が切れてしまっていた。
まず昨日はXと10か月ぶりに再開。Xの席はパーティションの向こう側なのでしばらく存在に気が付かず、黙々と作業をしていたら、Xが私の席まで来て「Hello」と話しかけてくれた。びっくり。お互い、久しぶりに会えたことが嬉しいと思う気持ちが一緒のようだった。話題は当然のごとく、1年目の審査(Confirmationという)になる。彼は2月の中旬(私の2週間前)に審査を控えていて、今提出するレポートの大詰めらしい。でも1つのセクションがうまく書けなくて悩んでいる模様。それだけでなく、「僕はこの1年で何も生み出していない。自分が情けなくなる」と言い始めて、相当弱気になっていた。
実際、この1年で何を進めたのか話を聞くと、私がやっていることとそんなに変わらない。まあ、私の進捗もほめられたものではないが、私自身は少なくとも「何も生み出していない」という気持ちになったことはない(そもそも1年目で何かを生み出そうと思っていないからかもしれない)。ロックダウンがあったせいで子供の家庭教師を担うことになり、フル活動はできなかったが、その中でも何百という数の論文を読んで、学問的な知識をインプットしたり、それを整理することで今まで接してきた事象を違う角度で捉えられたり、単純にぼーっと頭を空っぽにしたりと、忙しさに追われていた会社員の時にはありえなかった贅沢な時間を過ごしてきたなと感じている。
Xの年齢は聞いていないが、おそらく20代後半くらい?で若く、人生経験が浅いこともあって悩みがちなのかもしれない。自分に厳しいのは悪いことではないけど、ずっとそんな風に考えていたら疲れるだろうな、と思ってしまう。1年たっても指導教官と話をするのに緊張したり、指導教官へのメール文面を考えるのに1時間ほどかかってしまう、という話も。完璧主義者なのかな。そんな風に10分ほど、お悩み相談のような感じで話を聞いていた。彼は社会学部の中でもPolitics and International Relationsという学科にいて、中国の政策推移が研究テーマ。面白そうな研究なので、これから研究の話も聞いてみたい。
そして今日の夕方、オフィスがあるビルを出てキャンパス内を歩いていたら、隣の席に座るバングラディシュ人のLに遭遇。向こうがハグの姿勢で向かって来たので、思わずハグしてしまった(コロナゼロの間は問題ないはずだが、あまり推奨される行為ではない気がする)。「久しぶり!元気だった?」と挨拶。とても懐かしい感じがしたが、実際一緒に机を並べて作業していたのは昨年3月の1か月間だけ。同じ境遇にいるということが連帯感を深めるのかもしれない。
数分だけ立ち話。彼女の1年目の審査は3月中旬とのことで、私の2週間後。私の進捗をシェアしたが、彼女は何と1か月半前に指導教官を変えたので、審査自体も遅らせるかも、と言う話だった。そんなことあるんだ、とびっくり。その指導教官は確かバングラディシュ人で、彼女がバングラディシュの大学で教官(研究員?)をしているときからの知り合い。それもあってこの大学を選んだのに、来てみたら相性が合わなかったとのこと。3月に話をしていた時、指導教官とのミーティングがストレスだ、と言っていたので、変えられて良かったんだと思う。
もっと話をしたかったけど、私は帰宅の時間が迫っていたし、彼女は彼女で忙しそうだったので(3歳の子持ちで旦那さんもPhD学生という状況)、今日のところはさよならした。でも10か月ぶりに会えてうれしかった。PhD仲間との他愛もない会話や情報交換を自分がこんなにも求めていたとは気が付かなかった。
すでに交友関係ができていれば、オンラインでも関係を継続できるけど、たった1か月程度しか会っていない相手とは、ロックダウン中にどんな話をしたらよいのかわからない。私の留学1年目である2020年は、コロナのせいでイメージしていたものと全く違うものとなった。オーストラリアにいるのに話す相手はほぼ家族のみ(もちろん日本語)、いる場所はほぼ自宅のみ、という生活を半年間強いられた。2021年は少しでも他のPhD仲間と顔を合わせて交流したいと改めて思った。XやLというPhD仲間と10か月ぶりに会い、短時間でも会話をしたことで、辛い2020年を耐え忍んだことを思い出し、また2021年は少しマシになるんじゃないか、という希望の感触を初めて持つことができた。