40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

オーストラリアの学会に初参加

今週の月曜日から水曜日に、自分の研究分野と関連するオーストラリアの学会があった。時節柄Zoomでの開催。まだ1年目の自分は発表できるような内容がないので、とりあえず参加費用の20ドルを支払って、学会発表とはどんな感じなのかを学ぶためにも関連が深そうなセッションをいくつか聴講した。3日目にDoctoral Workshopという、博士課程の学生向けのワークショップが開催されるということで、こちらにも参加を申し込んでみた。これは研究のステージ問わず、博士課程に所属する学生が自分の研究内容についてその分野の教授陣(学会のメンバー)から直接フィードバックをもらえるという会のようだ。1日目と2日目の学会に参加していてもしていなくても、またこの学会の会員でなくても無料で参加できるというありがたいシステム。

 

前回のブログにも書いたが、私はここ数か月間、リサーチクエスチョンとリサーチデザインを組み立てているが、正指導教官が長期休暇で不在だったこともあり、十分なアドバイスがもらえていない状態だった。グダグダな内容であることは自覚しつつも、何かしらアドバイスがもらえるなら、と藁にもすがる思いで?10月末に申込をした。申込時に1,500 words程度のサマリーを出すことになっていたので、その時点でのLiterature reviewとResearch designのドラフトチャプターを編集して提出した。

 

10月末に提出してから何の連絡も来ないので、受け付けてもらえなかったのかな、と思っていたら、先週の火曜日、つまりワークショップの10日前になって突然事務局から連絡があり、当日のアジェンダ、参加するPhD学生の詳細と各学生を担当するメンター(教授陣)のリストが送られてきた。学生は全部で8名。オーストラリアだけでなくニュージーランドの大学の人もいた。そして、私のメンターはたまたま同じ大学の経営学部(ビジネススクール)の人。前回の記事にも書いたが、調べてみたらこの分野で著名な国際ジャーナルのチーフエディターの人だった。一流の先生が担当してくれるなんて幸運だと思った。しかも、その先生は学会を立ち上げたメンバーの一人でもあるということが分かった。

 

PhDワークショップは全体で2時間あった。ワークショップの目的には、PhD学生の育成だけでなく横のネットワークづくりというのもあるため、全体の半分は交流、半分はメンターとの1対1のセッションという組み立てだった。正直Zoomということもあり、交流のパートはちょっと辛かった…Face to faceならまだ良いのだろうけど。無料のオンライン英会話レッスンだと割り切って、できる範囲で参加した。子供の小学校でのカリキュラムを見ていても感じるけど、こちらの人は小さいうちからいろいろなテーマについて自分の考えを発表することになれているから、テーマが研究のことでなくても、上手くしゃべれる人が多い。交流セッションで用意されていた質問は、例えば「これまで観た中で最悪の映画は?」とか「今後挑戦したいと思っているエキストリームスポーツは?」とか、私ならどう答えて良いかわからないものばかりなのに、参加者のほとんどは突然当てられてもなんだかんだと面白い話をする。オーストラリアの人たち、コミュニケーション力が高すぎる。

 

私が当たった質問は「ロールモデルは誰か?」という比較的答えやすいものだった。私はロールモデルという言葉が好きではなくて、普段はこの質問に対して何も答えないけど、流れをしらけさせてもいけないので、今回は答えることに。ロールモデルではないが、家族以外の人で自分の人生に与えた影響が大きい人として、小学校6年生~中学校の時に通っていた英語教室の先生を挙げた。日本で初めて子供を産んだ後もCAとしての仕事を続けるために会社と交渉し、新たな道を切り開いた人。JALを退職後、大学に通い母子2人で留学もして、学位取得後は最近まで大学で教鞭をとっていた。パワフル過ぎて真似はできないけど、子供の頃に海外に興味を持つきっかけになっただけでなく、生き方そのものにも何かしら影響を受けている、という話。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B6%E7%94%B0%E6%84%9B%E5%AD%90

 

そんな感じで交流のパートを何とか乗り切り、お待ちかねの1対1セッション。蓋を開いてみたら40分間があっという間だった。冒頭、10月末に提出した内容は先週、正指導教官からのアドバイスがあり大幅にアップデートしていることを告げたら、どうやら正指導教官のことは知っているようだった(学部は違うけど、結局のところ研究分野は近いので)。メンターの先生からは最初に「私はほとんどコメントというよりも質問をさせてもらいます」と言われ、本当に質問の千本ノック状態だった。これが自分にとってとても良かった。見た目はちょっと怖い人、でも話してみると親身になってくれていることがわかった。一方で、次々の投げかけられる質問に対して当然即答できないこともあり、考えを整理している間に沈黙が流れると「I am still waiting for your response」とプレッシャー掛けられて(笑)、程よい緊張感があった。

 

使っている言葉の定義、なぜそう考えるのか、それは何を根拠にしているのか、など研究のベースとなることを立て続けに突っ込んで聞かれたことで、自分のリサーチクエスチョンがまだまだぐらついていることがよく自覚できたし、500社のデータ収集の仕分けについて悩んでいることも相談してみたら、よいアドバイスがもらえた。そのアドバイスを以下に記録しておく(今回もちゃんと録音したので、今日すべてのアドバイスを聞きなおした)。

It is important for you to respond to the data in an organic way and trust your gut feeling that there is something going on here that needs some attention.

 

自分の現状が全然ダメなことを自覚させられるのは辛いが、この年になって、こんなに山のようにアドバイスをもらえるなんて、学生という立場は本当にありがたいとも思う。働いていたらもうほとんど誰もアドバイスをくれない。自分が常に与える側になってしまうから。自分が裸の王様になってしまわないか、いつも気にしていた。

 

そんな感じで昨日のセッションを振り返って整理していたら、先週書きなおして提出したResearch designのドラフトに対して、正指導教官からメールでフィードバックが来た。ダメダメモードになっていたところに、嬉しいメッセージ。

This is a really solid draft of your methods chapter so well done - and very well written. 

 

添付を見たら、たくさん修正とコメントが入っていたけど、方向性としては間違っていなさそうなので安心。明日全体をレビューして、来週月曜日のミーティングに備える。返信がてら、昨日Doctoral Workshopに参加して、メンターの先生からもアドバイスをもらえたことを指導教官に伝えたら、That's great. A is a very good scholar and I always find her comments/feedback very useful and helpful.とのこと。やっぱり知り合いなんだ。訳も分からず申し込んだが、結果として一流の研究者と40分間も1対1でセッションさせてもらえて私は幸運だったな、このアドバイスを無駄にしないように頑張らないと、と思った次第。でも疑問は次から次に湧いてくるし、研究って難しいな、と最近思う。