40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、11月に博士号取得。現在は東京にある外資系企業で勤務。

マスクのせいで英会話が難しくなった

Victoria州は16日間連続でコロナ新規感染者はゼロ。そんな中でも検査数は毎日1万人~2万人の間で推移しているので、信頼できる数字と捉えている。世界一長くて厳しいロックダウンに耐えたおかげで、だんだん日常生活を取り戻しつつあるけど、マスクの義務化はまだそのまま(着用していないと200ドルの罰金なので、ほとんどの人はまじめに着用している)。厳しいロックダウンが緩和されてきて出かける機会も少しずつ増えてきたけど、ここ1週間くらいで感じたのは英語が通じないということ。当初、引きこもり生活が長かったせいで、この数か月で自分の英語力が落ちたのかな、とも思ったけど、よく考えてみるとマスクのせいではないか。

 

以前のブログにも書いたけど、私の英語の発音には日本語のアクセントがある。それでもこれまでは、ほぼ100%の割合で相手に通じていた。また相手の会話も特に問題なく聞き取れていた。それがマスクを着用し、外出するようになってから、とたんに通じなくなってしまった。あれ、なんか英語がわからない?通じていない?と最初に違和感を持ったのは、先週シティのカフェに行ったとき。

 

fourty.hatenablog.com

 

記事には書かなかったけど、実は、店員のお兄さんが言っていることが聞き取れない、自分が話している言葉が聞き取ってもらいにくい、ということがあった。この時はまだ、自分の英語力が落ちたせいだと思って、ちょっとショックを受けていた。ネイティブの人と対面で会話する機会は、このカフェが実に数か月ぶり。それまでネイティブ話者との英会話はすべてZoom越しだった(指導教官とのミーティングや学科のリーディンググループ、学部内のシンポジウムなど)。

 

その翌日、大学の図書館に行った帰りにキャンパス内のスーパーに寄り、新しくできた酒コーナーでアップルサイダーを2本買った。レジカウンターで店員のおじさんが何か言ってくる。「え、何ですか?」と聞きなおしたら「IDはありますか?」と聞いているようだった。まずこの質問にびっくり。オーストラリアは18歳から飲酒可能で、私も20代前半の頃に留学していた時は、たまにIDの提示を求められることもあったが、さすがに40代になった今回のオーストラリア生活では言われたことがない(40代が10代に見えるわけがない。ジョークで一度言われたことあるが)。アメリカと違って、オーストラリアではアルコール購入時に一律でIDを確認するようなことはない*1

 

スーパーのおじさんには「学生証ならあります」と言ってみたが、学生証には生年月日が書かれていないので、「年齢が証明できるものは?」と聞き返されてしまった。仕方ないので、日本の運転免許証*2を見せた。でも日本の免許証の生年月日欄は西暦ではなくて元号で書かれている。半ばやけくそに免許証を見せながら「この年号はナインティーン・セブンティーエイトという意味です」と、年のところを大声でゆっくりと言ってみた。そうしたらおじさんが急に申し訳なさそうに「マスクで顔が見えないから年齢がわからなかったんだよ。酒コーナーも最近作ったばっかりで、まだ運用ルールが…」みたいに言い訳?を言って、すぐに会計してくれた。40代女性に年齢を聞いて、公衆の面前で大声で言わせてしまったということについて、申し訳なく思ったのか?(私はお酒が買えれば良いだけで、年齢のことは事実なので隠すつもりもないが)。よくわからないけど結果オーライだったので私も「大丈夫ですよ、大学の中にあるお店なのでIDは確認しますよね」と返してみた(ちゃんと通じたかどうかは不明)*3

 

このやり取りがあって「ああそうか、マスクのせいで英語が通じないんだ」と思い当たった。マスクで口がふさがれているため、発声する音が通りにくくなるだけでなく、口の動きが全く見えないのが意外に影響しているのではないか。会話のコミュニケーションというのは、耳から入ってくる音だけではなく、目で相手の口の動きを捉えるということも含めて、総合的に成り立っているんだと思う。声が聞こえにくいだけならZoomでも聞こえにくい時はあるが、口が隠れていてマスクをした上での会話は、聴覚と視覚の二重のハードルがある。そう思って、聴覚障害者の人はもっと困っているのでは、と調べてみたら、案の定そういうニュースが見つかった。

www.nhk.or.jp

 

今朝もマスクの壁にぶつかった。朝一で、数か月ぶりに開いた室内のPlay centreに家族で出かけたが、受付で「I haven't made a reservation, but…」みたいに話したら、受付の人から「Have? or Have not?」と聞き返された。これもtのような母音を伴わない音がマスクのせいで聞き取りにくかったのだと思う。「Have NOT」と言い直したら通じた。結局朝のセッションはコロナ対策による人数制限もあり予約がいっぱいで、午後に予約を入れて出直しとなったので、ブログを書いている。

 

Zoomの方がまだ通じやすい。音声も大きくできるし、顔が見えるので。非ネイティブである自分にとって、マスクをしたままでの対面での会話というのは、英会話のハードルをさらに高くすることになっていると実感。メルボルンの人たちにとって、マスク義務化により、マスクは毎日身につける下着のような存在になっている。私も含めて多くの一般人は、使い捨ての不織布マスクでは経済的にも環境的にも負荷が大きいので*4、洗って繰り返し使える布マスクを使っている。大学や近所で見る人の中では、布マスク比率はざっと7割くらいかな。でも布マスクは生地が分厚くて余計音が通りにくい。聞き取りは改善のしようがないが、自分が話すときは、ゆっくりはっきりと話すようにするくらいしかない。

 

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大学キャンパス内の芝生エリアには、1.5メートルのSocial distancesを確保するために白い輪が書かれていた。私が見たときは鳥しかいなかったけど…



 

*1:アメリカ出張の際に気が付いたが、アメリカではバーに入るときもスーパーでビールを買うときも必ずIDを確認されるし、提示しないと販売してもらえない。

*2:日本に置いてきたと思ったら実は数週間前に発見して、無くさないように財布に入れていた。

*3:今思い返してみると、パスポートの写真データを携帯に保存しているので、それを見せれば良かったかも。

*4:当然医療関係者など必要な人は使い捨てマスクをしている。