40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

博士論文は10回書く

今週は、月・火・金と3時間ずつトータル9時間、PhD学生向けのセッション(Zoom)を受講した。3回ともテーマは違うけど講師は同じ人。内容はそれぞれ、ライティング、PhDのプランニング、PhD生活におけるWell-beingについてだった。今週の自分の状況とセッションの内容がいくつかリンクしていたのでタイムリーだった。自分の直近の状況は先週の記事にも書いた。

 

fourty.hatenablog.com

 

先週の金曜日に9,500 wordsのChapter 3(先行研究レビューの2つ目の章)の1stドラフトを指導教官に送りつけてフィードバックを待ちながら、今週はChapter 4のリーディングと構成に取り組んでいた。指導教官からのフィードバックは今週木曜日の夕方に来た。Ch 4の骨組みも一通り完成した。

 

Zoomセッションの内容のうち、今の自分にタイムリーだったことや学びになったことを記しておこうと思う。

 

①博士論文は10回書く

セッションの中で講師の先生が言っていた言葉。結構インパクトがあって気に入っている。以下備忘録。

  • 準備ができてからライティングに取り掛かるのではなく、準備ができる前から取り掛かる。ライティングはある日ひらめきが起きてするものではなく、定期的に(毎週、毎日など)行うもの
  • PhDは文献を読んだり、調査をしたり、実験をしたりすることでもらえるのではなく、論文を書いて提出することでもらえる
  • とにかく早くライティングに取り掛かりZero draftを作る。そこから1st draft, 2nd draft...とだんだんクオリティが上がり、最後10回目くらいには博士論文として仕上がっているだろう
  • 博士論文の質を追求し始めると終わりがない。一生そのテーマで書き続けることもできるだろう。では何が終わりを決めるのか。それはデッドライン。3年間という時間の中で、博士論文に資する質までもっていくための支援をするのが指導教官の役割

 

②計画を立ててルーティン化する方が成果が上がる

会社員生活を15年以上していたので、規則的に生活したり、計画を立てて実行したり、コンティンジェンシープランを考えておくことは、ストレートでPhDに来た学生よりも慣れていると思うが、それでも改めて重要なポイントを確認できたのは良かった。

  • まずは3年間の博士課程の全体スケジュールを、6か月ずつに区切って立てる
  • 次は最初の6か月(or この先6か月)のスケジュールを作る、その次はこの先1か月、次は1週間、次は1日、そして最後にTNT(The Next Thing)を決める
  • 計画は変わる前提でPlan Bも念頭に置いておく
  • 自分が立てた計画と現実は異なる。自力で行うことは大抵2倍、ツール(ソフトウェアや実験など)を使うことは大抵3倍、他人を巻き込むこと(インタビューなど)は大抵5倍、自分の想定よりも時間がかかると思った方が良い
  • 研究者でも、計画を立ててルーティン化した方が成果が上がるという調査がある

 

他にもいくつか参考になる点はあったが、特に今自分の置かれた状況に対して上記が特に響いた。

 

ライティングについて、指導教官からのフィードバックはこれで2回目。今回は800か所以上のRevisionがついていたが、よく見ると前回よりも指摘が軽い気がする。修正履歴を見ると、水曜日の午後と木曜日の午後にトータル数時間かけてみてもらえたようだ。ありがたい。最初は指導の意味も込めて細かめに見て、2回目からは軽めに見てくれたのか、それとも私のライティングスキルが上がったのか、どうなのかわからない。でもメールのメッセージを見てほっとした。

 

Hi 私の名前

You have done a great job on the XX lit review - very comprehensive and detailed. Attached are some comments.
This will provide a great foundation for your ongoing research as the chapter demonstrates you in-depth understanding of the lit, but your final lit review chapter(s) will probably look quite different to this early draft.
Look forward to catching up on Monday.
Cheers, 先生の名前

 

全体像はよくつかめているけど、最終的には大分違うものになるでしょう、というコメントは、セッションで学んだ①とリンクしている。これで良いんだ。ライティングはプロセスだから、次に進めるものが書けていれば良い。今回見てもらったChapterは、全体の調査の中で軸になる概念だが、まとまった文献が世の中には存在していない。方々からかき集めてきた内容を自分なりにまとめたことで、スタート地点に立てたような感触はある。

 

そして今週は次のChapterに取り掛かっている。先週大仕事を終えて、ちょっと休みたいな、と思っていたけど、ルーティン化することが大事なので、気乗りしなくてもやると決めたことを進める。そうすれば100%できなくても50%くらいは前に進む。これは②の教え。そしてその次のチャプターについて、今週は文献をみっちり読み込む予定だったけど、ある程度読んだら、早めにZero draft(スケルトン)を組み立て始めることにした(①の教え)。確かにこの方が効率が良いかもしれない。ちょうど来週の月曜日に、指導教官とのMeetingがあるので、その時にZero draftを見せて意見をもらおうと思う。

 

 

あと、セッションでは結構メンタルヘルスのことも言っていた。PhDに進む人って、一般的には優秀な人(これまで努力して成功を積み上げてきた人)が多く、挫折経験があまりないので、PhDをやっている途中に挫折を経験してドロップアウトしてしまう人やメンタル疾患にやられる人が多いとのこと。自分はもう40代で15年間の会社生活の中でいろいろ理不尽な目にあった。自分の意見や仕事内容を否定されたり、先輩からいじめを受けたり、恥ずかしい思いをしたり、上手くいかないこともそれなりに経験してきているので、ある程度の耐性というか、図々しさを身につけている。振り返ってみると年を取るのも悪くないな、と思ったりした。

 

もし今、自分が20代で、修士からストレートで博士課程に入って、家族もいなくて一人で外国にいて、コロナでIsolateされていたら、辛い状況だったかもしれない。とはいえ、会社員生活でやってきたこと、積み上げてきたことと全然違うことに取り組んでいるわけなので、それはそれで大変な部分もある。結局、いつ博士課程に在籍するのがベストなのかはその人次第、ということなんだろう。

 

(追記)

参考リンク:受講したセッションの講師の方(Flinders大学の先生でコンサル業務もしている)のWebサイト(有料・無料のツールがあります)。

https://www.ithinkwell.com.au/index.php

オーストラリア以外にも多数の大学で講習を行っているようです(日本はありません)。

https://www.ithinkwell.com.au/our-clients