1週間前に書き上げた先行研究のレビューの最初のセクションのドラフトを今週の細切れ時間を使って推敲した。初稿の文字数は6,000ワード超。自分の研究テーマの基本となる議論について必要なポイントはこぼさず、膨大になりすぎず、かつアナリティカルな視点を持って整理するのは結構大変だったが、推敲を終えて先生に送った今、初めて小さな達成感を味わっている。
内容について、当初18世紀まで遡る勢いになってしまった時もあったが、指導教官からの適切なアドバイスにより、近代的な議論から開始することにして、1950年代からの文献を読んだ(その時代の本も今は大学の図書館のサイトを経由してE-Bookとして読むことができありがたい)。今は2020年なのでタイムスパンで言うと70年分ある。これだけで1冊の本を書けるテーマだが(そして教科書として何冊も出ているが)、私がやるべきなのは、この過去の議論を単に整理するのではなく(それは他人がすでにやっていること)、キーとなる理論を踏まえつつも、この後続く自分の研究テーマにとって関連が深いポイントを拾い上げ、過去の論文で見落とされている(と今のところ私が思っている)ポイントと重点的につなげながら構成すること。
今自分に与えられた時間でできることはやったと思う。また、自分が書きたいことがある程度書けたような気もする。書き始めたときよりも明らかに自分のテーマに対する理解が深まった。もっと時間をかければもっとたくさんの文献が読めるし、ひょっとして大きな見落としやさらに興味深い議論があるかもしれないが、ただそれをするためには多くの時間がかかるし、私が初稿を書き終えたのは先行研究のうちの一つのセクションに過ぎない。これはベースとなる議論ではあるが、タイミング的に次の山に進む必要がある。何か大きな見落としがあれば、指導教官が指摘してくれるだろう(それも仕事の一環だと思うので)。
今回、自分が書いた英文を推敲するために初めて英文添削ツールを使った。Grammarlyというもの。1月か2月ごろ、何かの拍子にこのツールの広告が出てきて、試しに無料版をインストールしていたが、ほとんど使っていなかった。数週間前に有料サービスの割引のメールが来ており、なんとなく頭の片隅に残っていて、今回有料サービスを契約して使ってみた。無料でも結構添削できるみたいだが、年会費も大した額ではなく(140米ドル)、メールで初回の年会費が75ドルということで、敷居が低かった。また素晴らしい点は、GrammarlyをWordにプラグインできるので、いちいちコピーペーストしなくてもその場でどんどん修正を進めていける。
結果、使ってみて良かった。すでに元を取ったような気もする。これ、どれくらいみんな使っているのかわからないけど、私が15年前に修士で留学していた時にはこんな便利なツールはなかった。課題のエッセーの文法ミスは自分でなるべくつぶして提出したが、先生から文法ミスの指摘が入るときもあり(でも幸いスコアにはほとんど響かないようで成績は概ね良かった)、最後修士論文を出すときには、ネイティブの知り合い3人に頼んで、分割して文法チェックをしてもらった。人に頼むのは非常に心苦しかったが、その時は他にどんな方法があるのかわからなかった。Grammarlyみたいなツールがあれば、絶対それを使っていたと思う。
これを使ってわかったのは、私はまだまだ冠詞がマスターできていないということ。Grammarlyのチェックは、Correctness, Clarity, Engagement, Deliveryという4項目に分類されているが、特にCorrectnessは文法的な正しさについてのチェックなので、ゼロにした上で提出するのが望ましい。今回、6,000ワード超の文章に対して、最初にカウントしていなかったので不確かだが、100か所を超えるCorrectnessのチェックが入った。その半分以上は冠詞を付けるべきところにつけていなかったり、単数/複数のミスなど。基本的な文法のルールがいつまでたってもマスターできていない自分。最近、もう少しちゃんと英語の勉強しようかな、と思い始めている。
Grammarlyの他のチェック項目については、全部反映しなくても良さそう。有料会員になるとチェックのモードを選ぶことができ(フォーマル、アカデミックなど)、それに合わせてより適切なチェックをしてもらえる。例えばClarityのところで受動態がチェックされる(能動態が望ましいらしい)が、プロの論文を読んでいても受動態は普通に使われているので、受動態に関するチェックはある程度スルーしている。またあえて使っている単語についてのチェック(General過ぎるなど指摘が入る)もスルー。私はGoogle翻訳などの翻訳ソフトは使っておらず、最初から自分で英文を書いているためか、Grammarlyにかけると膨大なチェックが入った。内容の推敲をする前にまずはGrammarlyで文法ミスを直した。
ちなみに、あまりにもGrammarlyのチェックが多かったので、ネイティブが書いた文章はどれくらいチェックされるんだろう、とオーストラリア人の指導教官の博士論文の一部をGrammarlyにかけてみたら、普通に何個もチェックされてた。適当に選んだところをチェックしてみたら89点らしい。なので、Grammarlyに完全に従わなくても問題ないのだろうが、自分にはどこを採用してどこを不採用にしたら良いのかわからないので、ひとまずCorrectnessはすべて、他も可能な限り反映する方針にしている。
書いていたらGrammarlyのレビュー記事みたいになってしまったが、これで「てにをは」レベルのミスは無くせていると思いたい。Grammarlyによる文法チェックを終えた後、2回ほど内容を推敲した。無駄な部分をカットして順番を入れ替えたり、途中で新たな論文を1本読んでその内容を補足したり。指導教官から内容に対してフィードバックをもらうために最低限の修正はしたと思う。毎回指導教官に見せるために有料のEditing serviceを使っても時間もお金もかかりすぎるので、当面はGrammarlyでやっていこうと思う。今後論文を投稿したり博士論文を仕上げる際には人によるサービスも使うかもしれない。便利な世の中になったものだ。