40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。2023年3月帰国、フルタイムで働きながら博論執筆中。

メルボルン生活セットアップ 家探し編

メルボルンに来て3週間。到着日から滞在していた大学のビジター用アパートをあと5日で退去せねばならず、この1週間は真剣に家探しと向き合った。オーストラリアで家を借りることのハードルの高さに直面し、かなり不安な気持ちになっていたが、ようやく今日、家主との契約までこぎつけられたので、これまでのことを記事にする。

 

グーグルで「オーストラリア 賃貸」などと検索すると、様々な記事が現れるが、共通して日本から来たばかりの人がオーストラリアで家を借りることのハードルの高さを説いている。私と夫は若干楽観的な性格なので「まあ、何とかなるだろう」と思っていたが(そして結局何とかなっているが)、一時期は「今回は何とかならないかも」という考えがよぎった。日本と大きく違うのは、オーストラリアでは圧倒的に貸す側の立場が上。借りる側は貸す側に厳しく審査される。そしてその審査に重要なのは2点。①家賃の支払能力の証明 ②これまでの賃貸履歴(借りる側としておかしな行動をしていないかどうか)。

 

留学生でも、私のように長年社会人をして十分な貯金を持っていれば①はクリアできそうだが、意外とそうでもない。十分な資金があることを銀行の残高証明書で示し、奨学金が毎月振り込まれることを大学からの奨学金受給連絡書類で証明しても落とされることがある。②はさらに厳しい。オーストラリアに来たばかりなので、過去の賃貸履歴がない(しいて言えば、今の仮住まい)。オーストラリアに来たばかりの学生は、賃貸市場ではリストの最下位に位置することになる。

 

貸し手優位であるため、借り手は複数の物件を内覧し、複数の物件に申し込む。そして自分たちが貸し手であるオーナーから選ばれるのを待つ。このことは弱い立場にある留学生の我々に限らず、現地のオーストラリア人も同じ(決して外国人差別ではない)。決まったエリアで自分たちが設定した家賃レンジの家を内覧していると、同じような条件で探している人(つまりライバル)と複数回顔を合わせることがあった(オーストラリアでは決められた日時に借りたい人が一斉に内覧をするシステム)。シェアハウスするのであろうオーストラリアの学生3人組、中国系の留学生3人組、現地社会人2人組、アラブ系の夫婦と幼児、シングルマザーと10代の娘などが私たちのライバルだった。

 

私たちの今回の家探しの状況をまとめると以下になる。

内覧した数:8件

申込した数:5件

受かった数:2件(うち1件は条件付き)

 

これを実質10日間程度で行った。申込みには、大学院の入学申請やVISA申請を思い起こすような多数の証明書類を添付することになっており時間が取られる。まず仲介業者によって審査がされ、通ったらオーナーに情報が行く。私たちは大手のRay Whiteという会社の物件をいくつか申し込んでおり、その会社の審査は通ったが、オーナーに落とされたケースもあった。

 

最初にOKをもらえて、これから住むことになるのは、最後におまけ程度に内覧した物件だった。そこは仲介業者が間におらず、内覧に行ったら直接オーナーが来た。仲介大手のRay Whiteの担当者は内覧時にAudiBMWに乗ってきて、髪の毛もセットされたできるサラリーマン風の人たちだったけど、その家のオーナーはボロボロの三菱のセダンに乗ってきた。年は50歳前後、くたびれたTシャツに短パンでいかにもオージーといった風貌。話してみると子供好きで、とても良い人そうだった。平日の夕方だったせいか、内覧に来ていたのは私たちだけ。「Are you the owner of this property?」と念のため聞いてみると、「Yes. And I built this house and other two houses.」というようなことを言う。ん?Built?自分で建てたってこと??と思いながら、内覧しながら話を聞くと、そのおじさんはファミリービジネスで建設業をしていることが分かった(本業は建設業、副業が賃貸ビジネスのよう)。

 

内覧中、まだIDも見せていないのに「君たち良さそうな人だから、希望するならこの物件を貸してあげてもいいよ」と言ってくれた。何をしているのか聞かれたので、「学生です。つい最近オーストラリアに来て、これからPhDコースを始めます。でも日本で15年間働いてきて十分貯金があるし、奨学金ももらうので、家賃の支払い能力はあります」と一気に答えたら、「や、別にそう言う意味で聞いたんじゃないよ」と言われてしまった。

 

他の仲介業者には嫌になるほどの証明書類を出したのにも関わらず、なしのつぶて状態だったけど、この人は顔を合わせて少し会話しただけで貸してくれると言う。何だか拍子抜けしてしまった。でも私たちを信頼してくれたのは分かったし、信頼できそうな人なのは雰囲気で分かった。車を買った時もそうだったけど、オーストラリアでは人を見てピンときたら、勢いに乗って決めてしまった方が良いのかもしれない。タイミングが合わないと全然決まらないこともありそうなので。

 

とりあえず、まだ他に審査結果待ちの物件もあったので、明日返事をします、と言って帰ってきた。次の日の昼になっても数日前に申し込みをした物件について他の仲介業者からは何の返事もないので、結局、一発OKをくれたおじさんに連絡、借りたいことを伝えた。

 

返事をした日の夜、仲介業者からメールがあった。2件申し込んだうち、1件はオーナーが私たちに貸したくないと申し込みを却下、もう1件は敷金を通常の1.5倍、家賃を6カ月分前納(これは私がもともとオーナー側に提示していた条件)なら貸しても良い、との返事。その物件も悪くはなかったけど、足元をみられて警戒されながら貸してもらうより、私たちのことを信用して快く貸してくれるおじさんの方にした。仲介業者にはお礼を言って断った。

 

このようにして、オーストラリアでの初めての賃貸物件探しは無事にクローズ。その後、オーナーのおじさんと契約と引き渡しのやりとりをしたが、なかなか面白い経験ができたので次の記事で書く。

 

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無事借りることができた家(3ベッドルーム、後ろに小さな庭もある)