40代からの博士課程留学

41歳でオーストラリア・メルボルンで博士課程留学(社会学)を始めた自分、現地小学校に通う子供のこと、家族での海外生活などを綴る。

指導教官とカフェでミーティング

前回の記事にも書いたけど、私の博士課程は来週月曜日から始まる。先だって、今週水曜日に指導教官の2人の先生とキャンパス内で会う約束をしていた。約束の時間は10時、場所は先生のオフィス。まだコース開始前なので、特別な準備はせず、リュックに筆記用具、携帯と財布、日本からの手土産のお菓子を入れて、自転車で向かった。大学は夏休みなので、キャンパス内は相変わらず静か。

 

10時ちょうどにMain supervisorの先生の部屋をノック。Hi! Welcome. Nice to meet you again.といった感じであいさつを交わしていたら、その声を聞いたCo-supervisorの先生も部屋に入ってきた。ここでミーティングするのかな?と思ったら、先生二人とも財布と携帯をもって、「じゃあ、カフェに行きましょう」となった。私もそのままリュックをもってエレベーターで降りていく。

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やたらと巨大なビルの中に社会学部が入っている

キャンパス全体は近代的でおしゃれなのに、社会学部が入っている建物はそこだけ時間が昭和(オーストラリアで昭和というのも変だが他に良い形容が思いつかない)で止まったような感じになっている。Historicalな建物というには新しく、近代的な建物というには古すぎる。建物を出て、先生に「大きなビルですね」と言ってみたところ「明らかにこのビルは大学の中で最も古い建物の一つでメインビルディング」とのこと。社会学部のほかにも経済学部などが入っているようだ。その流れで、歩きながらキャンパスの説明をしてくれた。「10年前まではこのキャンパスは非常にUglyなキャンパスだったけど、リノベーションをして今かなりいい感じになったわ」とのこと。確かに全然Uglyさはない。

 

キャンパス内を歩いて2~3分の所にカフェがあったが、そのカフェがとてもおしゃれでびっくり。この郊外の界隈にあって、メルボルンのCityのカフェのように洗練されている。後から気づいたが、St. Aliというメルボルンの有名カフェが出店しているようだ。カプチーノを頼んだら、きれいなラテアートが施されて出てきた(写真は撮り忘れ)。

 

そこから、指導教官2人(ちなみに2人とも女性)と私の3人でおしゃべりスタート。「生活落ち着いてきた?」といったような話から始まり、今まで行った場所(City, St. Kilda、モーニントン半島)の話をすると、ひとしきりそれらの場所についてのコメントや感想が2人から帰ってくる。トータル1時間くらいカフェでチャットしたが、半分はプライベートの話、半分は大学やPhDの話だった。

 

大学関連の話として印象的だったのは以下の会話。

 

指導教官:私も社会人を15年以上やってからPhDに入ったけど、初日に自分の指導教官に聞いたわ。私は何をすればよいのでしょう?まずはリーディングでしょうか?と。そうしたら、先生はそうね、と答えてた。

 

私:そうなんですね。But I don't even know how to access journals.

 

指導教官:確かに。図書館に社会学部の担当をしてくれている司書がいるので、彼女から色々と教えてもらうといいわ。彼女にメールしておいてあげる。You should meet her soon. (その後実際にメールしてくれて、月曜日にさっそく司書の方に会うことになった。)

 

私:ありがとうございます。実はOnline inductionの時に図書館で様々なセッションがあることを知りました。EndNoteの使い方がわからないので、とりあえずそれは出たいと思って予約しました。

 

指導教官:That's good. EndNoteは必須。読んだ文献はすべてEndNoteにマークしておいた方が良い。その時ピンと来なくても、後でフィールド調査していた時に、あれっ、こんな話をいつか論文で読んだな、、と思い出すこともあるから。私は今のところ1,500くらいの文献をマークしているわ。そしてジャーナルに論文を投稿するときにもEndNoteがすごく便利。

 

副指導教官:私は実はEndNoteを使っていない。

 

指導教官:えっ?!どうやって文献の管理をしているの?? (話は2人の間でしばらく続く)

 

といったような風に、3人での会話がシームレスに続いていく。他に面白かったのは、大学は縦割り社会(Silo)だ、という話。私の研究テーマであるSustainabilityはかなり多くの学部にまたがるテーマであり、また新しい分野でもあるため学部間の連携は比較的できている方だと思っていたが、学内にあるSustainability instituteと社会学部の連携が悪い話や大学がキャンパスのSustainability planを考える際に学内にいる多くの専門家(指導教官含む)には相談しないで多額の費用を外部コンサルに支払っていることなどを聞いた。どの世界にと縦割りってあるんだな、と思って聞いていたが、企業の方がまだ柔軟なような気もする。

 

あとは、研究テーマの話になった時に、あなたの研究計画書はよく出来ている、と再度ポジティブなコメントをもらえて嬉しかった。その流れで研究は日本にフォーカスするのかどうか、ということも聞かれた。今のところ、日本にフォーカスすることは考えていないが、調査をする中で世界全体の潮流と比べて日本にUniquenessがあることがわかってきた場合は、比較研究する可能性もゼロではない、と答えた。先生は、この分野で最近アジアの事例研究をたまに目にするようになったが、日本の事例は見たことがないし日本の研究者も知らない、とのこと。やっぱりと思った。私も自分の研究計画書を作る際にGoogle Scholarで英語で検索したとき、日本人の研究者が書いた論文はほとんどヒットしなかった(事例を日本に限らずとも)。日本国内ではかなり積極的に議論されているテーマであり、欧米とは違う良さもあると感じているのに、英語で書かれた論文数が圧倒的に少なく、このテーマについてアカデミアの世界では日本はほとんど存在しないも同然になっている。

 

私が所属している企業も含めて、企業はグローバル化しており、諸外国でも日本の企業は(一時ほどではないにしても)そこそこ存在感を示しているのに、アカデミアの世界はまだまだドメスティックなんだな、とあらためて感じた(おそらく医学や生物学などの分野ではそんなことないんだろうが)。特に私が属する社会学系は扱うテーマがグローバルなテーマであっても英語論文が圧倒的に少ないように思う。言語のハードルが高いのかもしれないが、優秀な日本の大学の先生たちは、研究で得た知見を国際ジャーナルに投稿し、国際学会で発表して、英語ベースでの知識の蓄積と日本以外の国も含めた実社会への還元に積極的に貢献してほしいと思ってしまった。

 

まだ研究を始めてすらいない自分がずいぶん偉そうなことを言っているが、これが今の正直な気持ちだし、私がわざわざ海外の大学に所属して博士課程を行おうと思っている理由の一つでもあるので書いておく。実際のハードルの高さは、自分が英語論文を書いたり国際学会に参加することになって嫌ほど感じるだろう。

 

これが水曜日の話。木曜日と金曜日はそれぞれ長男、次男の小学校初日だったので、次はそのことを書こうと思う。